ファーストリテイリングが20年春採用の新入社員の初任給を2割引き上げる。現状の21万円が25万5000円になり、総合商社の初任給に匹敵する水準だ。広報部に聞くと、ファッション小売りで常態化している販売員の人手不足と初任給引き上げとは直接関係ないという。
同社は海外出店を拡大しており、主力のユニクロはすでに海外の売り上げ規模が国内を上回る。今後も海外の商売を伸ばす考えで、そのためにグローバルに活躍できる人材の採用を増やしたいと考えている。
仕事に求める「やりがい」「安定」「成長できる」「残業の有無」「福利厚生」などの条件のどれが多いかは時代で変わるし、何が最優先かは個人の考え方で異なる。ただ、ネットでの情報収集やSNSでのコミュニケーションが当たり前の世代には「会社が自分に何を求めているか」気にかける人が多いようだ。
ファストリの初任給引き上げは、その意味で、海外市場を大きくするのが会社の方針で、それに共鳴する人材に集まって欲しいという意思表明と言える。
売り手市場がいつまで続くかは分からないが、好条件の提示で、採用競争力を高めるだけでは、望む人材を募ることはこれからもっと難しくなる。大切なのは、その会社が若い人たちに何をしてもらいたいと考えているのか、上手に伝えることだと思う。