《めてみみ》家族という存在

2019/03/18 06:24 更新


 起業を決意し、辞表を出したその日、妻から妊娠を知らされた。絶妙のタイミングだった。前日だったら辞めるのを躊躇(ちゅうちょ)したかもしれない。「夫婦二人なら何とかなる」という甘い思いも吹き飛んだ。腹を据え、生まれてくる子供のために本気度はさらに高まった。セレクトショップのオーナーに開業当時のことを取材した際の話だ。「ここまで来られたのは家族のおかげ」と振り返る。

 中小企業白書によれば、企業が創業期に直面する課題は、第1に資金調達、第2に家族の理解・協力だという。経営ノウハウがあって優秀な人材がいても、家族の理解と協力がなければ創業に向かって走り出せない。最初の壁は、銀行と家族の信頼を得ることなのだろう。セレクトショップのオーナーにとって、家族は壁どころかスタートアップの踏切板だったのだが。

 もちろん、壁は次々とやってくる。3年目、10年目、企業が存続する限り壁にぶち当たる。原因か分からないまま業績は下降し、何をやっても回復しない。家族の協力だけでは乗り越えられないような高い壁もある。

 NHKの連続テレビ小説「まんぷく」が最終盤に向かっている。今までにない新しい製品の開発に打ち込む主人公と、それを理解し支える妻を描いてきたが、カップ麺の開発では主人公の息子が父とともに高い壁に挑んでいる。



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