《めてみみ》大きな節目

2019/03/11 06:24 更新


 19~20年秋冬デザイナーコレクションは、大きな時代の節目を感じさせるシーズンだった。期間中にカール・ラガーフェルドが亡くなったニュースが、世界を駆け巡ったことも影響している。彼の死をきっかけに、ラグジュアリーブランドのデザインとビジネスの在り方を改めて考えさせられた。

 「その依頼を受けた時、人々は口を揃えて『やめたほうがいい。最悪だ。もう終わったブランドだ』と言った。今でこそ、古いブランドを再生していくのが当たり前だが、当時は誰もそんなことはやっていなくて、新しい名前や新しい世界が必要とされていた。だからそれを聞いて、むしろ面白いじゃないかと思ったんだ」。ラガーフェルドがシャネルからの依頼を受けた時のエピソードが、ショーの冒頭で紹介された。

 当時は、創業デザイナーの作ったブランドを、他のデザイナーがディレクションする前例は無かった。つまり、今につながる老舗ブランドのリブランディングの原型をラガーフェルドは作ったわけだ。今や80近くあるパリコレクションの公式スケジュールの3割がこうしたブランドだ。

 しかし、そのクリエイションがブランドの伝統やアーカイブと合致して新しい時代を描ける例は必ずしも多くない。それを任せられるデザイナーの力量、知識、経験が試されている。



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