《めてみみ》重心を支える

2019/03/07 06:24 更新


 家ではソファでくつろぎたいのだが、たいていは愛犬が独占している。居心地が良い場所は犬にも心地良いのだろう。長々と寝そべって譲ってくれない。

 椅子張り生地メーカーによると最近、要望が多いのはペット対応の生地だという。ペットを室内で飼う家庭が増え、生地に臭いが付かない家具が人気だ。ツメを研いでも、噛(か)み付いても傷つかない生地もある。

 台所用の漂白剤に浸しても色落ちしない生地も需要が伸びているそうだ。背景にはノロウイルスなどへの集団感染がある。漂白剤に含まれる次亜塩素酸には殺菌作用があり、アルコール消毒の効かないノロウイルスにも効果がある。ノロウイルス食中毒が発生すると、保育園などでは、家庭で家具や持ち物を漂白剤で浸すようにふくことを推奨する。ただし、漂白剤に浸すと色が抜けやすい。

 ニーズに応え、椅子張り生地の機能はどんどん進化している。もちろん、椅子の基本は座り心地。心地良さを追求して新しい素材や加工技術が毎年登場し、空間演出の要素にトレンド感も取り込んでいる。

 腰を落ち着かせる。腰を据える――くつろいだり、懸命に打ち込む時、人は重心を下げる。下がった重心を支えてくれるのが椅子。快適に座ってもらえるよう、椅子張り生地には、素材と機能、ファッション性のバランスが求められている。



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