この時期、メンズ専門店の売り場を取材すると、決まって「年明けのセールがぱっとしなかった」という話を聞く。理由の一つは、セレクトショップなどでは、前年の12月から実施する会員向けセールでめぼしい冬物が売れてしまったから。
値引き率を抑えてセールをスタートすると「まだ安くなるはず」と客が待つので、売れないということもある。「ゾゾタウンでタイムセールやクーポン割引などのイベントが連日あるので、時期を固定した店のセールにお客さんの気持ちが動かない」との声もある。
そうした状況を何とかしようと、あるセレクトショップは昨秋冬にオリジナルでローゲージのニットを企画した。きっかけは「若い客層は冬に着るセーターにあまり暖かさを求めていない」との気づきだった。
ごつい見た目と裏腹に綿・アクリル混の糸で編んでいるため、秋口に1枚で着てサマになり、中に保温下着を着て、上にダウンジャケットでも羽織れば、寒くなってからも十分使える。結果、このセーターは1万円を超える値段にもかかわらず、プロパー販売で9割強を消化した。
このセレクトショップは今春も、色だけを変えて、同じ素材のセーターを販売した。今どきの客が何を基準に服を選んで買うのか、値段以外の理由に着目すれば、ヒット商品を生むことはまだできる。