金石範氏の小説に『火山島』がある。文芸春秋の単行本で全7巻。ざっと計算しただけで200万字を超える大作だ。正月休みを挟んで、読み終わるまで1カ月を要した。これまで読んだなかで最も長い本のような気がする。
小説は1948年に起きた韓国・済州島の4・3事件を題材にしたもの。東西冷戦の初期、左右両派の対立のなかで起こった内乱で、犠牲者は3万人とも8万人ともいわれる。大阪の鶴橋にあるコリアタウンは、この時に済州島を逃れてきた人たちがかなりの数を占める。
政治的な立場の違いから、小説への評価は様々にあるようで、韓国内でも事件に対する捉え方が今も定まっていない。ただ、小説全体を通じて貫かれているのは、日本への複雑な感情だ。事件そのものに日本の関与はほとんど無いが、日本の統治が無ければ…という思いが強く伝わってくる。
韓国からの訪日客は昨年の暫定値で750万人。中国の830万人に抜かれたとはいえ大きな数字である。一時減少が懸念されたが11月は再び増勢に転じているのは喜ばしい。新しいEC法の施行により中国人向けが厳しくなるなか、韓国への期待は高まる。この間、日韓関係はぎくしゃくした出来事が続く。願わくば、政治と一線を画し、訪日客の思いをくみ取りながらビジネスも発展させたいものだ。