《めてみみ》肝心の力

2019/01/24 06:24 更新


 米国を除く11カ国が参加する環太平洋経済連携協定「TPP11」が昨年末に発効し、2月1日にはEU(欧州連合)との経済連携協定(EPA)が発効する。日本にとって自由貿易圏が大きく広がる。

 TPP11と日・EU・EPAでは、輸出入者や生産者が自ら原産品申告書を作成できる自己証明制度を採用。「機動的に原産地証明できるメリットがあるが、繊維の事業者はあまり手掛けたことがない制度」のため、日本繊維産業連盟や日本化学繊維協会は講習会を開き、輸出を後押しする。

 日本繊維輸出組合によると18年の繊維品輸出は前年比4%増の約79億ドルになる見通し。12年から落ち込みが続いたが、歯止めがかかった。苦戦していた欧州向けも伸びている。欧州向けは全体の10%。化繊協会は「生地の輸出拡大に効果が大きい」とEPA中心に期待する。

 「日本製生地の品質が落ちている」。東南アジアの縫製工場の工場長が嘆く。最近よく聞く話だ。コストダウンと引き換えに品質や安定性を犠牲にしてはいないか。その工場では「一度ハサミを入れたら終わり」と検反を強めトラブルを未然に防ぐ。

 自由貿易圏の拡大で輸出のチャンスは広がる。しかし肝心の商材の力が落ちては世界で勝ち抜くのは難しい。他を圧倒する武器は何か。何があってもぶれない強い方針と信念が必要だ。



この記事に関連する記事