既成概念の崩壊が急速に広がっている。これまでの常識や成功モデルが全く通用しなくなった。背景にはITの進化で、顧客自身が大量の情報、知識を持つようになったことが大きい。
例えばダイナミックプライシング(価格変動制)だ。同一の商品やサービスは同一の価格で提供するのが当たり前だったが、需要と供給の状況に合わせて価格を変動させる戦略を指す。以前は航空料金や宿泊料金など限られたが、様々な業種で導入が広がっている。
販売や在庫の状況、天候やSNSといった様々なデータをAI(人工知能)が分析し、動的に価格を決定していく仕組みが整いつつある。これまで同一商品・同一価格だった電車の運賃、コンビニの商品、薬なども対象となる可能性がある。
百貨店は一物二価を認めないことを大原則としてきた。同一商品であれば店舗によって価格が異なることはない。セール時期でも同様だ。しかし、店舗の立地や競合関係などに応じて需要をコントロールすることで収益を最大化する一方、需要減の時期に価格を低くすることで、需要を喚起できる。
今の百貨店でダイナミックプライシングの動きは全くない。食品で閉店間際に生鮮品の値引きはあっても、買う相手、時期で常に価格が変動することはない。しかし、既成概念の崩壊に例外がないことだけは確かだ。