《めてみみ》あと数年もすれば

2018/12/04 06:24 更新


 20世紀半ばに創業したイタリアのシャツメーカーのオーナーに取材することになった。待ち合わせ場所にいたのは、若いアジア人。中国生まれでまだ30代という。北米で教育を受けた後、金融関係の仕事の傍ら、そのメーカーの事業を引き継ぐことにしたそうだ。

 仕事で訪れた欧州で英国やイタリアの仕立て服に出合い、傾倒していったらしい。ある時、本業のクライアントから後継者のいない家族経営のシャツ工房を紹介され、投資を決めた。

 卸し先の注文に応じたシャツを作るだけだった工房を、これからブランド化していくのだと話してくれた。「ブランド化して、中国でも市場を拡大したいか」と聞くと、「もちろん。でもたくさん売るより、世界最高のシャツを作るブランドにしたい」との答え。

 今や世界のラグジュアリーブランドの商売の3割を、中国市場が占めると言われる。が、「誰もが知っているロゴがあるから買うって人は実は中国でも減り始めている」という。あと数年もすれば、売れるブランドが入れ替わるはずと予見する。

 「工場の自動化が進んで、どこでも均質な商品が生産できるようになれば、昔ながらの丁寧な物作りの方が付加価値が高くなる」とも。優れた商品も市場にあふれれば陳腐化する。「規模を追わず、昔ながらの製法を守る」方が得策と考えているようだ。



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