昨年の衣類の輸入浸透率は過去最高の97.6%だった。国内生産量は前年比8.1%減と落ち込み、初めて1億点を割り込んだ。今年も衣料品輸入は1~7月で6%増と拡大し、国内生産はさらに厳しくなっているとみられる。
生き残る国内縫製工場はさらなるコスト削減要求に対し、外国人技能実習制度の活用など手を尽くし、事業を存続させようと必死。この延長線上に明るい未来を見いだせるだろうか。
「安くて早い」中国の台頭で、縫製地が日本から中国に移った。さらに東南アジアやバングラデシュ、中国内でも奥地や東北部に移る。中国では染色工場などの閉鎖が相次ぐ。中国が「安くて早い」国でなくなり、顧客から求められるスピードと品質、コストを実現するサプライチェーンをどう再構築するか、大きな課題だ。
新たな潮流がでてきた。アディダスは最新技術を駆使する靴工場「スピードファクトリー」を米・独に作り、従来の製造期間18カ月を「数日間・数時間」に縮め、消費者一人ひとりのニーズに合わせたマスカスタマイゼーションも実現するという。スピードとマスカスタマイゼーションを鍵に、「国内で作る」意味や価値が大きく変わる。
必要なものだけを最短で作るなど、国内製造だからこそ実現できる新モデルが生まれそうだ。すでに先行企業は走り出している。