セレクトショップのメンズの展示会を取材して思ったことがある。ドレスウェアの分野で、スーツの提案が増えているのだが、今秋冬は特にクラシックなディテールの盛り込み方がすごく強い。
例えば、ラペルが極太のダブルブレストスーツは、組み下のパンツが2プリーツで股上が深く、ボタンで留めるサスペンダーでつるしばきする仕様。シャツはピンホールカラーでネクタイはペイズリー。
言葉でうまく伝わらないかもしれないが、要するに古い映画の衣装みたいな、あるいは舞台衣装のような、普通の仕事着として着るには、若干勇気がいる。そう感じるくらいのスタイルも見かけた。
クラシックディテール自体はメンズドレスのここ数シーズンの目玉トレンドだし、実際の店頭にはベーシックな商品も置くのだろう。だが、ここまでトレンド要素を前面に出すのは、各店とも自社の提案が響くのが、よりマニアックな客層に移っていることを感じているためと言える。
いまや2プライス業態を含むスーツ専門店に行けば、派手柄ジャケットやスリーピーススーツなど、マス向けにある程度トレンドを反映した商品がセレクトの半分か3分の1の価格で買える。大手と万人向けの仕事着で戦っても勝算は薄い。ならば、そう簡単にまねできない「濃さ」で勝負しよう、ということのようだ。