「キャッシュレスの時代に財布はどうなっているのかまで考えて商品開発する必要がある」。ある革小物メーカー社長は話す。生活様式や消費行動の変化によってアイテムの役割が変わることは世の常だ。以前から日本政府も成長戦略の中でキャッシュレス化の推進を掲げている。
記者もコンビニで弁当を買う際など、小銭を出すのが面倒になり、「パスモ」での支払いが増えた。先日、政府は普及率を10年間で4割まで高めたいと発表した。海外では北欧諸国などキャッシュレス化が進む国も目立つ。
紳士服業界でもこの10年で大きな変化があった。クールビズの定着によって、ビジネスマンの夏の仕事着はノータイにシャツ姿が当たり前になった。クールビズ対応として吸汗速乾や消臭・抗菌、ストレッチなど高機能な商品開発が進んだ。一方でネクタイを締める人は大幅に減ってしまった。
しかし、盛夏向けスーツが消えてしまったわけではない。一部のおしゃれ上級者は、きちんとタイドアップしたスーツ姿にこだわっている。社会のデジタル化が進めば進むほど職人による手仕事の温かみや味わいのある革の風合いなど、アナログの魅力が見直されることも。今後も財布がなくなることはないと思うが、未来の生活シーンで新たな価値を提供できるような商品開発は今から始めるべきだろう。