《めてみみ》売るより、磨け

2017/06/02 04:00 更新


 「ブランドを売る時代ではなくなっている」とある百貨店の執行役員。この種の話を聞くことが増えた。ブランドに対する消費者の位置づけは確かに低下している。かつては流行と言われるブランドもあったが、最近はガウチョやコーディガンなどアイテムが目立って注目されている。

 デザイナーの個性やクリエイション力よりも、52週MDによる適時、適品、適価の提供が第一義と思われる「MD型」と呼ばれるブランドがある。似かよった対象客層やコンセプトの設定に加え、売り上げ確保のための商品計画が重視されるため、商品が同じような〝顔〟になってしまう。そうなれば、消費者が他のブランドとの違いを明確に認識することは難しい。

 値下げ販売の乱発、素材やディテールの変更といった原価の抑制は、過去に積み重ねてきたブランドのヘリテージ(遺産・財産)の毀損(きそん)につながる。こうした行動がブランド価値を低下させている要因だろう。もちろん、一方で確固たるブランド価値を有するブランドもある。

 「ブランディングとはブランドの未来に向かって活動すること」。あるレディスアパレルのトップの言葉に共感する。作り手、売り手の日々の行動が将来のブランド価値を決める。今、求められているのは、ブランドを「売る」ことではなく「磨く」ことではないか。



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