《めてみみ》素敵な仕事

2017/06/01 04:00 更新


 日曜日の夜、ホーチミン高島屋は子供たちのはしゃぐ姿であふれていた。ベトナム・ホーチミン市中心部に昨年オープンしたホーチミン高島屋。売り場面積が1万5000平方メートルと限られ、周辺の競合施設の子供服売り場が不振との情報から、「ベビー・キッズゾーンを作るのをやめようか」という選択肢も当初はあったそうだ。だが30、40代のファミリー層が主対象のため、「やはり必要」と服だけでなく、ベビーカーや日本製紙おむつほかベビー用品、おもちゃなどを充実したところ、客から支持され、「売り場を作ってよかった」と胸をなで下ろした。

 ホーチミンにある戦争証跡博物館。ベトナム戦争の悲惨さを遺留品や多くの写真で伝える。沢田教一や中村梧郎など日本人カメラマンの作品も多い。沢田氏がピュリツァー賞を受賞した、赤ちゃんを抱えた母親と3人の子供が米軍の空爆から逃れようと川を渡る「安全への逃避」や、枯葉剤による被害を撮り続けた中村氏の写真の子供たちに笑顔はない。

 ベトナム戦争終結は1975年。まだ40年強しか経っていない。写真の子供たちは今50~60歳くらいなのだろうか。その年代の人々が孫を連れて高島屋やイオンに来て、楽しそうに過ごしている。日本の百貨店やSCが家族全員で楽しめる場を作り、笑顔を引き出している。すてきな仕事だ。



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