【素材イノベーター⑤】 あつまるホールディングス

2018/06/17 06:30 更新


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 かつて養蚕が栄えた熊本県山鹿市で、一年を通した養蚕のためのハイテク工場が立ち上がっている。取り組んでいるのは、求人情報誌などを手掛けるあつまるホールディングス(熊本市)。14年に農業生産法人あつまる山鹿シルクを設立し、近隣に蚕のエサとなる桑畑も造成。昨年春にはシルクの安定生産を可能とする周年無菌養蚕工場「NSP山鹿工場」を竣工し、養蚕をスタート。シルク産業の活性化や雇用の創出など地域活性化に貢献する。

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安定生産を実現

 富岡製糸場の世界遺産登録などで注目が集まっているシルク産業だが、原料となる繭のほとんどが外国産。シルク需要も世界的に高まっており、価格が高騰しているという状況だ。こうした中であつまるホールディングスは、周年無菌養蚕の可能性と、「実際に地域に雇用を生み出す事業を」との思いから約25億円(工場23億円、桑園2億円)を投じ事業化を決断した。既に二十数人の雇用を生み出しており、工場や桑園の用地確保には山鹿市も協力。研究については農業・食品産業技術総合研究機構との連携や、熊本大学との包括連携協定締結など、アライアンスも活発だ。

 従来の養蚕は、エサとなる桑の葉が取れる時期にしか行うことが出来なかったため、年に3回ほどしか繭を生産できなかった。周年無菌養蚕システムでは桑の葉を主原料とする人工飼料を使うことで、最大年に24回もの生産が可能だ。現在は1回の養蚕当たり30万~40万頭を飼育しており、500~600キロの繭が取れる。2~3年以内に繭ベースで年間50トンを目標としている。これは群馬県で生産される繭の量に匹敵する。将来的には年間100トンを目指す。

 工場内には桑の葉の洗浄や裁断、飼料との複合といった人工飼料の生産設備も備えており、真空パックで保管することで、1年を通したエサの確保に成功した。蚕が育つ場所も徹底した温湿度管理と、クラス10000という半導体工場並みのクリーンルームで無菌状態を維持。シート状の人工飼料の上で蚕が育つことで、これまで1日3回だったエサを与える回数も30日で3回と劇的に減らすことができる。エサを育てる桑園も有機栽培。周囲から農薬の影響を受けることを防ぐため、標高600メートルの、かつて牧草地として使われていた耕作放棄地を活用した。

養蚕のバイオ産業化を実現した

バイオ産業にも

 製糸以降の工程は委託加工となるが、衣料品などで伊藤忠ファッションシステムと協業し、製品企画や開発、アパレルとのコラボレーションなどを行う方針だ。ただ、繭から糸を作る製糸業は、国内で製糸業者が減ったこともあり、ボトルネックになっているなど課題もある。今後は人工飼料の改善などでより高品質な繭の生産に取り組むほか、医薬、バイオ関連に向けた研究開発も積極的に取り組む。

 「山鹿はもともと養蚕業を営んでいた方も多く、工場建設などについての説明会などでも地域の方の反対は全くなかった。山鹿がシルクに関連する様々な業種が集まる『シルクオンバレー』になっていければ」(島田裕太あつまるホールディングス常務執行役員)と、今後に期待を寄せている。

2~3年以内に年間50トンの生産を目指す

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