【素材イノベーター④】スマートウェア ゼノマ

2018/06/16 06:30 更新


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 伸縮する電子回路を配したスマートウェア「e‐skin」(イースキン)を開発・販売するゼノマ(東京)は、国内外のアパレル企業や医療機関などからの受託開発を本格的に始めた。この間、米国で開かれている世界最大のテクノロジー見本市のCESへ出展するなどで独自技術の訴求機会を増やし、需要を探ってきた成果が実りつつある。

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洗える電子回路

 技術のベースは東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授らが、科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO)の一環で研究していたプロジェクトにある。ゼノマのコア技術である伸縮する電子回路はプロジェクトの研究成果だ。同社のコー・ファウンダー&代表取締役CEO(最高経営責任者)網盛一郎氏も同プロジェクトに参画していた一人。「ウェアラブル分野は進歩が速い。実用化を急がないと乗り遅れる」として、15年11月に起業した。

 イースキンは、伸縮する電子回路を繊維の生地上に形成する技術「プリンテッド・サーキット・ファブリック」を活用している。洗濯耐久性を備え、100回の洗濯後も性能は変わらない。電子回路上に歪(ゆが)みセンサーを搭載し、着用者の細かい動きを電気信号として検知できる。検知した信号はウェアに取り付けたデータ送信端末「イースキンハブ」が集約してスマートフォンやパソコンなどに無線転送するという仕組みだ。

 昨年に発表した製品は14個の歪みセンサーを搭載している。VR(仮想現実)ゲームのコントローラーや、スポーツのパフォーマンス解析、作業の習熟度向上および見守りといった用途を想定し、企業や個人の開発者向けに販売した。

 この間は、企業などからの要望に合わせたスマートウェアおよびソリューションを提供する受託開発に力を入れている。歪みセンサーのほか、心電、温度、加速度センサーなどを扱うセンサーのバリエーションも増やし、目的に応じて最適なセンサーを必要な箇所に配置したイースキンを開発している。

 欧州のアパレルメーカー向けにはより良いゴルフのスイングができるよう体の動きをモニタリングしてデータを取得し、フィードバックするような製品を開発中で19年に発表する予定だ。欧州の大学病院からは、認知症など患者の動きをモニタリングして初期症状に見られるような兆候がないかをチェックするための研究用ウェアを求められている。このほか、乳児の見守りウェアなど要望が増えてきた。網盛氏は「誰もが気軽に着られるよう着心地の良さを追求することで、ずっと健康を見守り、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの病気を未然に防げる安心、安全な社会を実現したい」という。

 同社への支援も着実に増えている。これまで、JSTや新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による支援のプログラムを通じて資金を得てきた。

量産体制を構築

 昨年9月には東京大学協創プラットフォーム開発とビヨンドネクストベンチャーズが運営する投資ファンド、JSTを引受先とする総額2億円の第三者割当増資を実施した。現在も事業会社を引受先とする案件が複数あり、話を進めている。

 現在、東京・大田区にサンプル開発拠点を構え、日系縫製工場の協力を得てベトナムに量産ラインを構築した。同工場ではスタンダードモデルおよび多品種小ロット品の生産に対応する。課題は生産能力のさらなる向上とコストダウン、技術人材の確保だ。受託開発の要望が増え、ビジネスの進展が見えてきた中、需要に応える生産基盤を整える。人的リソースも充実させ、事業の推進スピードを上げる考えだ。

VRゲームのコントローラー代わりにもなる「イースキン」 

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