皮革卸の丸喜は、害獣資源を有効活用した皮革「チバレザー」の扱いを始めた。100%土に返るなめし剤で仕上げた循環型の皮革を、卸売りの販路を生かし、幅広く販売していく考えだ。チバレザーは革工房の革榮(千葉県)が生産している。
害獣駆除によって廃棄される動物の皮の活用は、様々な企業や個人が行っているが、皮革卸が商業用として扱う事例はほとんどない。革製品向けに流通する皮革のように品質が安定せず、生産コストが高くついて価格が通らないことが大きな要因だ。
千葉県睦沢町を拠点にする革榮は、近隣で害獣被害が問題になっているシカやイノシシを地域資源に変えようとチバレザー事業を立ち上げた。兵庫県たつの市のなめし工場に協力してもらい、大豆を原料としたなめし剤を使う新しい製革技法を採用。付加価値を持った価格で販売する循環を組み立て、地元の若い猟師の収入向上に取り組んでいる。22年1月にクラウドファンディングに挑戦、目標を達成する支援が得られた。
丸喜でも害獣の皮革を扱うのは初めて。「地球環境と人間の共生を目指して取り組む事業モデル」に共感し、革榮の辻榮亮社長に直接連絡を取って、卸売りを始めることになった。23年秋冬向けから、卸売りの品目に加えた。
価格はシカ革で1デシ(10×10センチ)200円から、イノシシ革で250円から。「有害物質を一切使っていないので人や動物がかんでも問題ない。ヌメ革で変色しない加工もできる」という。個体差はあるものの、製品化に支障のない品質を担保し、用途開拓に取り組む。アパレル関連ではデニム製品の革パッチに採用され、土に返る特性を生かしたペットの骨つぼ用途の依頼もある。