【パリ=小笠原拓郎】19年春夏パリ・メンズコレクションは新たなディレクターを迎えてリブランディングを進めるコレクションやニューヨークから再びパリへと発表の場を戻したブランドなどのコレクションが相次いだ。気になるのはアンドロジナスなムードをたたえたコレクション。このところロンドンの若手を中心に再びアンドロジナスなコレクションを見せるようになり、今の時代に改めてこのラインが出てくる意味を考えさせられている。
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男性らしさと女性らしさの間にある美
メゾン・マルジェラは、ジョン・ガリアーノによる初のオートクチュールのメンズコレクションを見せた。
フェティッシュなエナメルレギンスと伝統的なブリティッシュチェックのジャケットから始まるコレクションは、男性らしさと女性らしさの両極の要素を取り入れた。スカートに拘束されたように身動きできないトップ、トレンチコートやテーラードジャケットの上からフィッシュネットのベストやシャツを重ねてフェティッシュなムードを作り出す。フレアパンツにはビュスティエトップを合わせ、官能的なムードを作る。きもの地のコートやきものを解体して作る手法にはマルジェラの伝統的な古着を再構築していくような要素が残っている。
しかし、このアンドロジナスなムードの強さはマルジェラのコードというよりは、ジョン・ガリアーノそのものだ。確かに、今はロンドンのチャールズ・ジェフリー・ラバーボーイをはじめとして新たなアンドロジナスなクリエイションを作るデザイナーが台頭している。そんな〝時代の求める何か〟を敏感に察知してのコレクションなのであろう。アンドロジナスといえば、ガリアーノの代名詞の一つのようなものだ。結果として、マルジェラのコードからは外れた部分もあるかもしれないが、それでも時代の求める強いものが詰まっている。



(写真=catwalking.com)