「買いたい」気持ち膨らませる

2015/03/23 10:40 更新


《スタンス》メイデン・カンパニー加藤東太社長
正確に価値伝えるマーケティング

 輸入卸が主力のメイデン・カンパニー(東京)が、今年で設立20周年を迎えた。ブランドの独自性、希少性といった魅力をもれなく市場に伝え、店頭で選ばれる商品に育ててきた結果が今の堅調な販売実績につながっている。この間はマーケティングを強化。消費者の動向を探り、消費者の「買いたい」気持ちを丁寧に膨らませていく。

震災機に見つめ直す

 雑貨の輸入販売から始まり、現在は欧米を中心としたブランドを、日本の販売代理店として複数扱う。00年からは現在の主力ブランドで、有力セレクトショップを中心に販売している米国の「インディビジュアライズドシャツ」の輸入販売をスタートした。「これまでは『このブランドが好き』という気持ちで売っていました」という加藤東太社長。

 転機は東日本大震災だった。「我が社の存在意義を問い直すきっかけになりました。『こんな時に2万~3万円もする服って本当に必要なのか?』『自分たちが扱ってきた服はなぜ売れていたのか?』『うちのお客様って一体誰なのか?』」と。

 ある日、社内で「『なぜ、インディビが売れているのか』という話になったのですが、そこで即答できなかった。高価なシャツを売る正当性を確認したくて、過去の販売データをもとに、私たちが扱っているブランドや商品の何が認められて購買につながったのか、マーケティングの観点も踏まえ、もう一度学び直しました」という。

 見えてきた顧客像。それは、高い品質や実用性、環境に配慮された物作り――など、「見た目のデザインだけでなく、商品やブランドにひもづく付加価値を見いだしてくれる人たち」だった。「お客様はどんな価値に魅力を感じているのかというと、〝機能的価値〟と〝情緒的価値〟の二つ」という。

 「インディビジュアライズドシャツの場合、機能的価値はファクトリーブランドとして培ってきた高い品質。情緒的価値は歴史や物作りの姿勢です」。61年にニュージャージー州でカスタムメードシャツ専門工場として創業し、かたくなに米国製を貫く。商品の同質化が進む今だからこそ、突き抜けるほどこだわる姿勢が際立つ時代。こうした背景から根強いファンを着実に増やしてきたと言える。

信頼が何より重要

 昨年は春夏、秋冬ともに売り上げは堅調だった。「景気が良くないので、消費は保守的で『買うなら定番品や信頼できるブランドを』という流れの中、当社が扱うようなオーセンティックな欧米ブランドが注目されました」という。「震災後、消費者は物も情報も真実、本質を追い求めるようになった。誠実であり、信頼できることが何より重要で、ちょっとしたズルも許されない」

 今は良くも悪くも情報がすぐに表に出て、信頼が高まることもあれば、損なわれることもある。「素晴らしい物の価値を認めてくれる市場へ正確に伝え続けるための手段を持たなければならない」として、マーケティングの重要性を感じている。

 また、「長いデフレの中、頑張っている小売業の人たちの不安を和らげられるような信頼関係を築きたい」と、「市場の動向を踏まえて方向性を一緒に考えるサポーター的な役割を私たちは担わないといけない」と強調する。



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