若手のショーケースとなったロンドン・ファッションウィーク(LFW)では、セントラル・セントマーチン美術大学とロンドン・カレッジ・オブ・ファッション出身者と並び、ウェストミンスター大学出身のデザイナーが注目された。最終日にはその2人、アルワリアとロビン・リンチが参加。同大学は三つの映像からなる卒業コレクションでも今回、公式スケジュールに参加している。
(ロンドン=若月美奈通信員)
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アルワリアは、ナイジェリアとインドという自身のルーツに通じる独特の色使いや流線パターン、市松柄のパッチワークをふんだんに盛り込んだレトロで温かみのある新作を見せた。レディスのデビュー作は、メンズ同様のビンテージやデッドストックを積極的に採用したカラフルなブルゾン、セーター、デニム、テーラードに加え、スリップドレスなど軽いアイテムも揃う。90年代のビデオクリップやビンテージのヘアサロンのポスターとともに着想源となったナイジェリアの写真家JDオカイ・オジェイケレの写真。その写真から飛び出したような、アーティスティックなアフリカンヘアが、多様性をアピールするクリエイションを引き立てる。映像は発表当日に協業バッグが発売された「マルベリー」と組んだもので、そのバッグやスカーフも一部紹介した。加えて、公開直前に今年度のBFC・GQデザイナー・メンズウェア基金の受賞者が発表された。15万ポンドの賞金に加えて、1年間様々なビジネスアドバイスが受けられる。21年の6月14日はプリヤ・アルワリアにとって忘れがたい1日となった。
ジョーダンルカは、車の廃棄場を舞台にしたショー形式の映像を見せた。たくさんの白やクリームにジェードグリーンやサフランイエロー、赤を差し込んだ新作はメンズの定番アイテムにジェンダーレスなひねりを加えている。白いライダーズジャケットは全面にチュールのバラを飾り、プリントの開襟シャツの胸元は深くあく。テーラードコートはトレーンのように裾を引き、オーバーサイズのテーラードジャケットにプリーツミニを合わせる。パンクやスキンヘッズの挑発的な気分もオーバーラップさせ、白いパンツやショーツの脇には大きなユニオンジャックを同色のカットオフテープで飾る。パーカの背中にはギャザーで囲まれた大きな穴が開いている。全体のインパクトよりも、一着一着を丁寧にデザインしている姿勢が伝わる。
ロビン・リンチは、シーズンを問わないアップサイクルのカプセルコレクションを発表した。昨年6月のサイクルウェアブランド「ラフィア」とのコラボレーションに続くシリーズで、今回はアウトドアブランドの「コロンビア」と組み、デッドストックを使った11ルックのメンズを揃えた。海を望むゴツゴツとした岩壁やジュエルカラーにライトアップされた洞窟を歩くモデルたちが着るのは、それと同じトーンのカジュアルウェア。デッドストックのパーカやジッププルゾンと、海洋プラスチックの再生ナイロンやシグネチャーのケーブルニットをはぎ合わせたハイブリッドウェアが揃った。