【パリ=松井孝予通信員】仏LVMHルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシーグループ傘下の百貨店ラ・サマリテーヌが、16年間の改修工事を終え、再オープンした。100年前のアールヌーボー建築が見事に復元された宝石箱のような百貨店を一目見ようと、初日にはパリジャンたちの長蛇の列ができ、にぎわった。
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サマリテーヌは1870年創業。01年にLVMHが買収したが、建物の安全のため工事が必要となり05年に閉店した。法律上の理由で改修計画は長期間中断されたが、昨年春に開業が決定。コロナ禍と時期が重なり延長された。同グループのセレクティブリテイリング部門DFSが同店を運営する。
7億5000万 ユーロ を投じた改修工事により、パリ中心地に構えるこの老舗は、大衆百貨店から類のないラグジュアリーの殿堂に生まれ変わった。建物はリボリ通り側とセーヌ川に面したポンヌフ側の二つに分けられ、総売り場面積2万平方メートルにファッション、ビューティー、ライフスタイルの600ブランドを揃え、12のフードコーナーを開設した。
新しい建物のリボリ館は、日本のサナアが手掛けた。ガラスパネルの外壁は同店の新しい顔。ここではコンセプト編集の3フロアにミレニアル世代に向けたデザイナーとストリート・アンド・アウトドアを提案する。
7層からなるポンヌフ館はラグジュアリー&クリエイターブランド、宝飾品を揃え、コンセプストア「ルルー」を併設した。地下1階には欧州最大3400平方メートルのビューティー売り場、ガラス屋根に覆われた最上階には1000平方メートルのレストランを備える。
さらに9月にはポンヌフ側建物にLVMH傘下高級ホテルの開業が待たれ、サマリテーヌにとって旅行者を獲得するこの上ない環境となる。同店は仏メディアに対し、訪仏外国人を期待できるのは来年夏との見解を示した。5年間で年間売上高4億 ユーロ を見込む。パリの他の百貨店はこの新ライバルの登場で、むしろ地元戦略をにらんだ大改装工事や売り場改革に着手、それぞれのリポジショニングを進めている。