フランス発祥のオートモードは洋服のオークチュールに相当する帽子の製法だ。日本で技術を継承する職人の一人、木島隆幸は、東京・代官山の直営店キジマタカユキで、オートモードの製法で作る「ハイライン」と古い帽子を解体して再構築する「アンサーイット」を販売している。今夏、プレスやバイヤー向けに制作過程をプレゼンテーションした意図を聞いた。
(須田渉美)
オートモードは仏人のジャン・バルテ氏が始めた製法で、彼の元で習得した平田暁夫氏に学び、技術を受け継ぎました。頭の大きさを採寸し、和紙などでイメージした形のチップという型を作ります。そこに素材を手でなじませるようにして帽子を制作します。木製の型で作る量産とは異なり、体や服のバランスを見てクラウンを低くしたり、流行をくんだ形にしたり、柔軟に変えることができます。アトリエで手作業で一貫生産しているので、自在に作れる強みがあります。

アンサーイットは、その生産背景があって可能になったプロジェクトです。昔の人は頭が小さく、のみの市や古着屋などで売っているビンテージの帽子は55センチなどのサイズです。今は男性の平均で59センチぐらい。質の高い素材を使っていても、頭が入らないので、古着のようにそのまま着用できません。一方で、この数年、良質な材料を仕入れることがどんどん難しくなって、戦争に円安が重なって価格も上がっている中で、それらの帽子を生かして再生できないかと考え、4年程前に始めました。一つひとつデザインが異なる帽子をばらし、状態を見ながら素材との対話を繰り返し、即興で作っていくような製品です。


プレゼンテーションは、美しさの本質を感じてもらい、オートモードの技術を残したいと思って行いました。平田先生はウィメンズの変化に富んだシルエットを得意としていましたが、僕は現代の日常的なファッションの一部として存在する帽子を目指して作っています。カジュアルなモデルでもどこか品がある、と言ってもらえるのはエレガントな線を作る基本が備わっているからです。
一方で、帽子の物作りに興味を持って、やってみたいと志願する若い方が少ないことに危機感もあります。受け継いだ技術を次世代にバトンタッチしていかないと。若い世代が「帽子の職人って格好いい」とイメージできる状況にしてく使命があると思っています。