ECと実店舗、その役割の違いとは?(藤永幸一)

2016/01/24 00:00 更新




ECのメリットは、手間暇不要で手軽なスピード感。煩わしい販売を受けずに済む、欠品などの恐れが少ない、時間節約などです。

一方、デメリットは、判断が消費者の自己責任になり、結局は自己経験を超える買い物ができない。衣料品はいいが、新しいファッションに関しては飛びつきにくいなどでしょうか? 

一つ思うことがあります。買い物に行こうと決めた瞬間から楽しい体験が始まっている女性の「気分」に、ECは対応しきれていないのだろうなということです。

「時間、空間」を体験する、「心地、気分」を味わうところまでは提供しきれていない。実際、ECでの買い物が、「アイテム」で選ばれているというデータからも、この事実がわかります。

共存を考えるならば、ECの深化を受入れたうえで、リアル店舗の役割を変化させるしかありません。では、リアル店舗をどのように位置づければよいのでしょうか?

実店舗は、ブランドと出会い、ファンになる場所です。ショールームです。ブランドを表現する力のある「商品」が並び、ブランドを体現し、魅力をあますところなく伝えるスタッフがいる空間です。お客様の気持ちをブランドに惹きよせ、高揚感を提供する接客のプロが必要になります。

店舗の数は、少なくてよいのです。無駄に多い店を運営するために、頭数で人を揃えるのではなく、お客様を迎えるための選ばれたスタッフが求められます。ECの画面上で手に入る情報は、もうお客様は知っているのです。それも幅広く、比較検討できる環境で。      

■顧客<新規客 

ブランドの魅力を伝えられることが一番大切。さらに、「自分の経験知」から商品を判断するしかないお客様に、今までとは違う世界に導き、ジャンプするきっかけを提供するのが現場スタッフになります。 

ニーズの明確な買い物は、どんどんECに移る可能性があります。リアル店舗では、ウォンツを刺激する体験が重要になります。ECの発展は止められない流れです。だからこそ、リアル店舗のアレンジ、変化を見極め、正しく対応するマネジメントがセンスの違いと言えそうです。

たとえば、「顧客販売」から、「新規客接客」にシフトする判断。売上が厳しくなると「会員」を囲い込み、「顧客販売」と称して売上確保に走る企業が後を絶ちません。けれど、これはじり貧に走ります。                         

ECの台頭を受入れるならば、顧客、つまりブランドをよく知る客こそ、ECでの買い物に何の抵抗も持たずにメリットを享受することは容易に理解できます。リアル店舗で大切なのは、新規客を一度の接客でファンにできるか、どうかです。                    

 そのポイントは、下記の3点。

①店頭印象が笑み感にあふれ、好感度が高い 

②スタッフのフットワークがよい

③セールス・トークのセンスがよい 

実はこの3点は、店舗覆面調査などの結果でよく指摘されるマイナス評価ポイントでもあります。つまり、ECの深化を受入れて、リアル店舗が共存する改善ポイントは、すでに現状でも、要改善の主テーマになっているわけです。                              

ECを成長軌道にのせるならば、既存店舗との共存を図ることがポイントです。



20年のアパレル体験で痛感したこと=仕事の悩みは、本当のところ、「人間関係」。2000年に、「レックス」を設立。「仕事を楽しむスキル」を学んで、「元気な現場」をつくるサポートをスタート。自分が「楽しい!」と感じれば、相手にも好感度が伝わる!大手アパレルとの長いお付き合いで、スキルは常にバージョンアップ中!



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