樹杏(岐阜市)は94年に神山建雄社長が創業した縫製工場だ。一枚流しによる安定した品質に加え、自社で裁断まで行える利便性の高さに支持が集まっている。
(森田雄也)
元々、神山社長の父が岐阜市内で神山縫製を営んでいた。アウターやマタニティーウェアの縫製などを受けていた。神山社長は20歳ごろに神山縫製に入社し、専務取締役として主に生地裁断に担当し、社内だけでなく社外の仕事も受けるなど仕事を拡大していった。
90年に最低資本金制度が導入された(現在は廃止)ことをきっかけに94年に自ら独立し、樹杏を立ち上げた。元々は得意だった裁断からスタートし、当時創設された技能実習制度も活用して、縫製も受けるようになった。今は中国とベトナムからの技能実習生12人が働く。
縫製での強みは一枚流しによる安定した生産。基本的に2人1組、もしくは3人1組で縫製ラインを構成する。前工程・後工程、前工程・中工程・後工程などに担当を分担し、一枚ずつ確実に縫製を完成させていく手法だ。
完成後は製品不良がないかを一枚ずつ確認する。常に物作りがアップデートされるので、作るほど不良品発生率が下がっていく。
一枚当たりの生産時間が正確に分かるので、受注先に提示する納期の精度も高くなる。さらに工員が移動しながら様々なミシンを扱うので、多能工化も進める。「働いて3年経った頃には丸縫いが出来るようになるのを目指している」(平下将義専務取締役)という。
アイテムは現在、パンツやスカートなどボトムが中心。ロットは50枚から300枚程度を受ける。特に専門商社を経由しての受注が多い。
もう一つの強みはCAD・CAM(コンピューターによる設計・生産)による生地裁断。CAD3台、延反機4台、CAM1台を配置。受注先から来た仕様書を統一したフォーマットの裁断管理表に落とし込み、それをマーキングして延反し、CAMで裁断していく。「CAD・CAMの導入は岐阜県内では相当早かった」(神山社長)とし、特にCADは導入して30年以上で熟練している。さらに接着プレス機も2台揃えていて、生地への芯地接着を社内で行うこともできる。
裁断はこれから縫製するための支給生地はもちろん、裁断のみの仕事も請け負う。レザーやナイロンなど裁断が難しい素材も受け、柄合わせなどの精度も高い。
さらに実習生が働く環境も整備している。今年6月に工場近くで売りに出されていた家があり、購入。そこをリノベーションして実習生の住まいとした。「住環境などを整備して働きやすくしていきたい」としている。