イタリア・トリエステで、21回目になる若手デザイナーのコンクール「イッツ2023」(イッツ財団主催)の授賞式が3月22日行われた。昨年に選考した作品だが今年にずれ込んだ。日本人の入賞が続く同コンクールは今回も日本勢が活躍した。大賞に相当する「イッツ・アーカデミー賞」に佐藤百華さん(文化服装学院出身)が輝いた。また、未来のファッション産業に寄与するプロジェクトに与えられる「イッツ・チャレンジ・ザ・ステータス・クオ賞」(チャレンジ賞)、優秀アート作品に授与される「ゴー!25・ボーダレス賞」(ゴー賞)、スニーカーのデザイン賞「イッツ・スポーツウェア賞 準グランプリ」に澁木智宏さん(武蔵野美術大学、ここのがっこう出身)が選ばれた。
(ミラノ=高橋恵通信員)
佐藤さんはコロナ禍で会えずに亡くなった祖母への思いを表現した、繊細なレースを重ねたノスタルジックなコレクション。「人生において、初めて〝死〟というテーマに向き合った。茶道、華道、墨絵など、日本の伝統文化とクラフトマンシップに造詣(ぞうけい)の深かった祖母に敬意を表し、四十九日を経てユートピアに旅立つ魂の物語をつづった」という。副賞として賞金1万5000ユーロを獲得した。
「深いストーリー性を評価した」というイッツ財団のバルバラ・フランキン会長は、ファイナリストの意識の変遷について、「2000年代初頭は、だれもがスターデザイナーになりたかった。今は小規模でもアーティスティックな方向性を追求しつつ、ネットワークを構築して、チームで仕事をしようとする傾向にある。今回、授賞式前にファイナリストを集めたワークショップを行い、その絆を深めた」と語る。