【パリ=松井孝予通信員】仏オートクチュール&モード連盟(FHCM)は8月9日、三宅一生さんの訃報に接し、追悼の意を捧げた。
一生さんは65年に渡仏、同連盟のオートクチュール組合校で学び、ギ・ラロッシュ、ユーベール・ド・ジバンシィの傍らで経験を積んだ。73年に外国人として初めてパリ・ファッションウィーク(PFW)に参加。FHCMの正式メンバーとなり、後に理事を務めた。
ブルーノ・パブロフスキーFHCMプレジデントは、「三宅一生さんは偉大なるファッションクリエイターだった。彼は様々な文化をつなぎ合わせる術を持ち、断固としたコミットメントとともにデビューからPFWを輝かせ続けた」と、その功績に敬意を表した。パスカル・モランFHCMエグゼクティブプレジデントは、「最先端のテクニックと伝統技術を調和させた偉大なるイノベーターだった」と称えた。
仏メディアは一生さんの死去を速報した。一生さんがファッションに初めて取り入れた革新的な技術と素材によるプロダクトに視点をあてながら半世紀以上にわたる活動をたどり、オマージュを捧げた。
三宅一生さんを悼む
「着る人」の笑顔作る仕事を体現
ファッションデザイナー・滝沢直己さん
三宅一生さんが提唱され、実現されてきた「Making Things」は、常に「着る人」の笑顔を作る仕事だったと思います。私たちは一生さんが常に言う「人がデザインの犠牲になってはならない」という言葉からデザインの大切なことを学びました。まさに創造者そのものでした。その言葉は、彼から学んだ私たちの心に深く刻まれていることと思います。ご冥福をお祈りいたします。
デザインの価値を創造する基盤築く
「ミナペルホネン」デザイナー・皆川明さん
三宅一生さんには、「ミナペルホネン」設立15周年の記念企画展において対談をさせていただきました。私は三宅さんが築いてこられた日本の物作りの共生への意志に共感しており、それは1社だけではなく日本の各ブランドで意識する必要があるという思いから依頼しました。
対談では、これまでの物作りや服そのものへの思いが丁寧に語られ、華やかな功績を支える実直な探究心を感じることができました。シーズンごとの展示会にもお越しくださり、日本の工場の現状についてお話しさせていただきました。10年前には日本のデザインミュージアムの構想を先導してくださり業界や社会全体にデザインの価値や環境を創造する基盤を作ってくださいました。
三宅さんの思考や哲学を改めて大切に心に刻み、これからの物作りやデザインが社会の幸福感や可能性につながるために、時と形を重ねていくことが三宅さんへの恩返しとなればと思います。心よりご冥福をお祈りいたします。
社会のために衣服をデザイン
「CFCL」クリエイティブディレクター・高橋悠介さん
デザインすることの意義を十分に理解できていなかった新卒の私に、社会のために衣服をデザインするという精神哲学を、実践によって教えてくださったのは三宅一生さんでした。今もそれは私の記憶に鮮明に残り、またCFCLの礎となっていることは疑いようもありません。
思想を学び、受け継ぐ者の一人として、次の世代にもそのバトンを渡していけるように、衣服とデザインすることそのものに、より一層懸命に向き合って参りたいと思います。ご生前のご厚情に深く感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。