【訃報・評伝】デザイナー三宅一生さん死去 享年84歳 世界のイッセイ

2022/08/09 19:49 更新


(C)Brigitte Lacombe

 ファッションデザイナーの三宅一生さんが8月5日、肝細胞がんのため都内の病院で亡くなった。84歳。葬儀はすでに執り行われた。故人の遺志により、告別式やお別れの会は行わない。

 1938年広島生まれ。多摩美術大学の在学中に装苑賞を2年連続受賞し、頭角を現した。パリやニューヨークで経験を積んだ後、70年に三宅デザイン事務所を設立。73年に「イッセイミヤケ」でパリ・コレクションに初参加した。「一枚の布」という考え方の服は、東洋の民族衣装のようなフラットな魅力があるのと同時に、現代的でミニマルなプロダクトでもあり、独自の存在感を確立。産地や企業とともに、一本の糸から研究開発を行い、独自の素材や技術による物作りを行ってきた。

 90年代には、細かいプリーツが体にフィットする「プリーツプリーズ・イッセイミヤケ」を発表。三宅一生が作り出した名品の一つと言える。誰もが自由に心地よく着られる服という発想は、多くの女性に支持され、今も続く人気商品となった。広い視野で社会を俯瞰(ふかん)した物作りは、多様性を重視する今の社会にもフィットする。

 07年には、社内に自身とデザインチームによる「リアリティ・ラボ」を立ち上げ、「21世紀の課題に応えたい」と衣服デザインの可能性を探り続けてきた。こういった取り組みは、次世代を担うデザイナーの育成にもつながっている。三宅デザイン事務所で経験を積んだデザイナーのなかには、「CFCL」の高橋悠介や「マメ・クロゴウチ」の黒河内真衣子といった世界で活躍するデザイナーも多い。

 ファッションや文化の歴史を後世に受け継ぐ取り組みも積極的に行ってきた。70年代には、多くのデザイナーにとって欠かせない場所となった京都服飾文化研究財団(KCI)の設立を、ワコールの創業者塚本幸一氏に強く要請し、立ち上げのきっかけを作った。近年は、六本木のデザインミュージアム「21_21デザインサイト」でのアート展の企画運営なども積極的に行ってきた。

 10年には文化勲章、16年には仏レジオンドヌール勲章コマンドール位を受章。

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