メンズ・レディスブランド「イロフシ」を運営するケシキ(東京)は、2月3日に三越日本橋本店新館4階に初の実店舗(売り場面積約620平方メートル)をオープンし、2月23日にはJR京都伊勢丹5階にも出る。代表兼デザイナーの柳澤陽司さんは「コロナ禍で物の価値や求める商品が見直されている。一貫して作り続けている付加価値の高い企画がより受け入れられる時代性になってきた」と話す。14年にブランドを立ち上げ、百貨店への期間限定店で商品背景を含めた魅力を伝え、ファン作りと認知度向上に取り組んできた。満を持しての常設店舗で、今後も主要都市への出店を狙う。
(古川伸広)
イロフシは「全ての物は自然に由来し退廃し、また自然に帰する。はかない物が美しいとする日本人古来の情緒的な美意識を追求した物作り」がコンセプト。商品は天然素材を使用し、天然染色で無添加の洗剤で洗うなど、サステイナブル(持続可能)な物作りの姿勢で、柳澤さん自ら手染めで作る一点物が特徴の職人系モードブランド。ろうけつ染めや墨染め、独自の「ろう墨染め」を用いた水墨画のような濃淡に加え、昨年から藍染め後に墨染めを施す「藍墨染め」を新たにスタートし独特のデザイン性と風合いを表現している。
柳澤さんはバンタンデザイン研究所ファッション学部卒業後、パタンナーを3年間勤めてイギリスに渡る。元々、自身のブランドを作ることが目標で、異国のイギリス滞在中に改めて〝わび・寂〟などの日本の良さを再認識し、日本古来の美意識をコンセプトにしたブランドを立ち上げることを決意した。当時、日本はラグジュアリーとファストファッションが台頭し、中間価格帯の商品が苦戦しており、「大手にはできない物作り、商品価値で勝負する」ブランド作りに邁進(まいしん)していく。
15年から百貨店での期間限定店を始め、昨年は全国で年間約50店を出店し、8月の大丸札幌店では1週間で約500万円を売り上げるなど付加価値が高く個性的な商品にファンが増えている。顧客に支持され、実店舗の要望も聞こえるようになり、「今が出店のチャンス」と、出店に踏み切った。手間ひまがかかる生産背景や設備が整い、販売員も確保できたことも後押しした。
商品構成はレディスが80%を占める。フリーサイズを基本に、ディテールや動きのあるシルエットが楽しめる企画が多い。コロナ禍以降は服と同じテイストのマスクやスカーフ、テーブルクロスなど生活用品も企画している。中心価格はワンピース・ボトム3万円台、カットソーアイテム1万5000円など。時代性や環境が変わり、顧客の「経年変化を楽しめる物が欲しい」「本当に気に入った物を長く愛用したい」などに応えるためにも、新たな服の価値の創造を目指していく。