丸和繊維工業のファクトリーブランド「インダスタイル・トウキョウ」は、プロの仕事人と協業した新モデルを加えるとともに海外展示会出展、ファッションブランドとの協業など新たな販路開拓、ファン作りに力を入れる。7月初旬には東京・両国の本社ビル1階にある直営店を増床リニューアルした。
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同ブランドは00年に立ち上げ、11年にリブランディングし、「動体裁断」をベースにドレス仕立てのニットシャツを都内百貨店で販売開始した。動体裁断は立体的で人間工学に基づいたパターン設計で腕を上げてもシャツの裾がつれないのが特徴。さらに伸縮性の高いニットに対応した自社工場での動体縫製によって、より動きやすく仕立てた。13年から海外でも評価の高いデザイナーブランドとの協業を継続する。現在、直営店やEC、百貨店への卸販売など。同社は56年創業でOEM(相手先ブランドによる生産)を主力にしたニット専業の縫製工場。
今回はバーテンダーの世界チャンピオンの石垣忍氏の協力の下、従来の肩関節に加え、ひじ関節のストレスを極限まで抑えたパターンを設計した新モデルを2年かけて開発した。石垣氏がシェイカーを振るひじの動きやすさを妨げず、スタイリッシュなボディーにフィットするシルエットを実現した。カフスを通常より5ミリ短い7センチに設定し、ずれにくく、汚れにくいようにした。石垣氏は「以前、着用していたオーダーメイドシャツ以上の着心地になった」という。同ブランド初のレギュラーカラーで生地は36 ゲージ の綿と「クールマックス」混のニットピケ。受注生産で1万8000円。
専門的な職業との協業では「ドライビングシャツ」では革小物のモルフォ(東京)のモータースポーツを切り口とした「ノイインテレッセ」とも協業し、プロのレーシングドライバーと共同開発している。今後もビリヤードや社交ダンスなど、その道のプロと組んだ動きやすいシャツの開発を進める。「ニッチだが深い商品を追求することで自社工場の技術が向上する」(伊藤哲朗常務)と見ている。そのほか、車いすを使用する人向けのシャツの開発も進める。海外販路開拓では伊のメンズ見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」をはじめスイスの展示会に出展している。また、伊の「ファーストパターン」と協業し、ブレザーの提案も始めた。
12年春に開設した直営店は売り場面積を3倍の66平方メートルに拡大し、ブランドの発信力を強める。入口にはファクトリーブランドらしく、シーズンごとに特殊ミシンなど製造設備を展示し、インテリアデザインも縫製工場をイメージした。壁には、動体裁断を開発した中澤愈教授による手描きの型紙をプリントした。ショップ奥の壁に、プロモーションビデオを投映する。「自社で作った商品を作り手が直接販売することで、さらに良い商品を作ることにつながる」(深澤隆夫社長)と強調する。