【論点】伸びるインバウンド 企業戦略に必須

2015/05/26 06:14 更新


 このところファッションビジネスでの明るい話題は、インバウンド(訪日外国人)需要による消費。業態別では百貨店、家電量販店、ドラッグストアなど、地域別では大都市、観光地といったところが伸びて、地方や中小専門店には恩恵がないという声も聞こえる。

 外国人旅行客は年々増えており、少なくとも東京オリンピック、パラリンピックの20年までは伸び続けるだろう。「うちなんか、インバウンドは関係ない」と言っていては、みすみす商機を逃すことになる。大事なことは、インバウンドを自社の成長戦略に組み込み、具体的なビジネスロードマップを作ること。

 その背景には、日本のマーケットの歴史的な変化がある。一つは人口減で、既に始まっている。推定では33年後の48年には1億人を割り、9913万人(現在より22%減)、60年には8674万人となり、65歳以上が約40%を占める。もう一つが、日本市場の最大の強みとされてきた中間所得層の揺らぎ。一定の質と価格を備えていれば、大量販売につながるというマーケットが崩れてきている。これらの変化はなかなか流れを変えられない。だとするなら、インバウンド、海外需要の開拓を避けて通ることはできない。

 日本政府観光局によると、今年3月の訪日外国人は前年比45.3%増の152万6000万人と、単月で過去最高を記録した。2月は春節(中華圏の旧正月)による大型連休があったが、3月の方が上回った。4月も43.3%増の176万4000人と更新した。1~3月の外国人1人当たり旅行支出は17万1028円(14.4%増)、旅行消費額は7066億円と四半期として過去最高だった。訪日外国人の数、消費額は右肩上がりとなっている。

 従来は春節の2月、国慶節の10月が目立っていたが、4月は花見を目的とする人が押し寄せるなど、今は年間通じて多い。東京・銀座、大阪・心斎橋、京都などだけでなく、地方でも外国人誘致に成功しているところがある。地道な努力は必要だが、大都市だけではなく、地方でもインバウンド需要の獲得は成立する可能性がある。

 だから、ファッションビジネス企業でも、インバウンド戦略は欠かせない。小売業やディベロッパーはスムーズに物が買える免税対応が一層必要で、人材教育・確保などの投資もいるだろう。もちろん日本らしい、おもてなしは欠かせない。

 アパレルは海外市場開拓とセットで取り組むべきだ。今、インバウンドで売れているファッション商品は、海外でも知名度があるブランド。いくら品質やデザインが良くても、知られなければ手を出してくれない。マーケットごとに細かくセグメントして開発したレディスブランドなどは、最たる日本商品だ。

 そのためにも海外進出は必要だが、今はいろいろな手段がある。かつては直営店を出すことが多かったが、それだけではない。越境EC(電子商取引)の活用、現地テレビショッピングやECサイトへの参加など、選択肢は増えている。

 



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