ウェス・アンダーソン監督の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』でグウィネス・パルトロウがまとっていたミンクのロングコート。またイタリアの巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ監督の代表作『家族の肖像』ではシルヴァーナ・マンガーノが、またアラン・パーカー監督作『エビータ』のマドンナ…と、タイトルを挙げていったらきりがないほど、イタリアン・ニューウェーブからヨーロッパ、そしてハリウッドの超大作まで、数多くの作品に印象的なファーや衣装、アクセサリーを作りあげてきたローマを代表するラグジュアリーメゾン「フェンディ」。
サヴォアフェール(比類のない臨機応変さ)で時代の先を読み、創造性と熟練のアルチザン魂により、登場人物をよりイキイキと造形する当メゾンならではのCINEMATIC JOURNEY的エキシビション「FENDI STUDIOS」が現在、イタリア文明宮にて開催中だ。
没入型デジタルエキシビションと称される本展来場者は、場面の中に入り込み、主人公になりきることにより、映画を追体験する…そんなユニークでワクワク感満載の展開が待ち受けているのだそう。
そしてまた本展会場もシネマとの縁が深く、これまでに『タイタス』『ズーランダー2』などに度々登場してきたとのことだ。
参考までに、フェンディ家3代目のクリエイティブディレクター、シルヴィア・フェンディの興味深いコメントを下記にシェアしたく。
シネマは私たち家族の生活にとっても、フェンディにとっても、常に重要な一部であり続けてきました。実際、昔からチネチッタとフェンディとは深い結びつきがあります。
「FENDI STUDIOS」は、“共感に基づき、新しい試みに挑戦し、物語を語り、夢を実現したい”という願いによって育まれた関係を、とても革新的な方法で称えるものなのです。
ちなみに、「作品の生みの親である監督にはどんな人物の名が連なるのか?」というと、前述の名監督に加え、マーティン・スコセッシからジュゼッペ・トルナトーレに至るまで、新旧問わず偉大な監督たちとの活動を継続しているとのことだ。
なお昨年10月27日よりスタートし、7月8日までの長期にわたる本展は入場無料!開館時間は午前10時~午後8時、そして上映会は要予約にて、毎日午後9時より観賞可能となっている。
というわけで、映画好き、ファッション好きにとってはローマへ旅する理由が芽生えたような気分では。
「装いのヒントはシネマに!」をテーマに、フェンディと映画の熱き絆にまつわるストーリーで幕を開けた今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
まずはドンピシャの新作『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』からスタート!
チャーチルという名を目や耳にすると、ついつい政治家であることよりも先に、彼のファッションとライフスタイルへと、興味がスウィッチしてしまう。が、決してそれらは紛れもない真実であり、本作においても「チャーチルが何を着ていたかをしっかり調べて再現すること」が衣装の鍵となったそうだ。
ちなみに、本作資料によると、
☑帽子は1676年創業の記録に残る世界最古の帽子屋こと、英国王室御用達ブランド 「Lock&Co. Hatters」の特注。
☑スーツは1806年創業のサヴィル・ロウ最古のテーラー「Henry Poole & Co」。
☑懐中時計は「Montre Breguet」。。。etc.
そしてまた
☑シャンパンは「POL ROGER」。チャーチルへのオマージュが捧げられた「POL ROGER CUVEE SIR WINSTON CHURCHILL」も。
☑シガーは「Cohiba Siglo」。
半分までしか吸わないこともあり、長さ178ミリ、直径18.65ミリのサイズを「チャーチルサイズ」と称されているそう。。。etc.
特殊メイクの開発と試作に6カ月。現場ではヘアメイクに3時間半、衣装を着るのに30分。こうしてウィンストンへと変身を遂げ、その者になりきった主演のゲイリー・オールドマン。
そして「ありのままのチャーチルを見せたい」という監督や脚本家の思いから、10年間の研究の末、元はジャーナリストだったというチャーチルだからこそ、重要だったのではないかと思われる言葉。
そしてその言葉を発するオールドマンの役作り。
こうした全てが重なり合わさり実現した「新たなチャーチル像」に私たちは出会い、「歴史を変えた27日間」に深く感銘を受けることになるのだろう。
妻役のクリスティン・スコット・トーマス、そしてチャーチルの個人秘書役のリリー・ジェームズ。彼女ら二人の存在も、重要な鍵となっている。
3月30日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
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「装いのヒントはシネマに!」がテーマの「CINEMATIC JOURNEY」。締めくくりは、前回少しばかり予告した、葛飾北斎に関する初の長編ドキュメンタリー『大英博物館プレゼンツ 北斎』
昨年5月から8月にかけてロンドンの大英博物館で開催された展覧会『Hokusai: Beyond the Great Wave』を舞台に、その名作の数々を細部に至るまで大画面で鑑賞することができ、さらに北斎に精通した学者や、イギリスを代表する芸術家デイヴィッド・ホックニーをはじめ、新進気鋭のアーティスト等の協力により実現した、唯一無二の極上ガイドツアー的作品だ。
モネやゴッホ、ピカソに至るまで、国内外、また時代や職業を問わず、影響を与え続ける北斎の魅力とは?
またその生涯に迫る内容は、前回ご紹介した「ユミカツラ」のドレスにデザインされた美しいコレクションの数々を思い出さずにいられない。
3月24日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
配給:東北新社 / 配給協力:DBI INC
Documentary film and guide to exhibition film c British Museum
BIG COMIC Manga images in documentary c Shogakukan
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中