遠い未来のような気がした東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。
続々と変貌を遂げる東京の街中にお目見えするホテルを目にする度に、一歩一歩、その日に近づいているのだな、と実感する。
そんなホテルにまつわる記事を今月の繊研新聞「カルチャー」ページで企み中の私としては、5ツ星ホテルが舞台の新作映画『5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生~』は必見!
ということで2018年の最初の「CINEMATIC JOURNEY」は、「ミラクル&ハッピー・シネマ2018」をテーマに本作でスタート✈
❝95%の視力を失った青年が、5ツ星ホテルで働くために“大芝居”を打つ!❞
というキャッチコピーに加え、実話と知れば、「もうこれは見ざる負えない」のが常。
そこでまずは簡単なストーリー紹介から。
主人公の青年サリーは先天性の病により、10代にして95%もの視力を失うことになってしまう。だが「5つ星ホテルで働きたい!」という夢をあきらめることなく、驚くべきチャレンジ精神と偽装、さらに周囲の温かなサポートのもと、まっしぐらに突き進む。そしてロマンスも…??
さて、映画の舞台になったホテル「バイエリッシャー・ホフ」は、バイエルン王国の第2代国王、ルードヴィッヒI世王により開業されたミュンヘンで最も伝説的なホテルなのだそう。そして偶然にも昨年、とある取材でそのスタッフにお目にかかり、本作の話題を耳にしたことを今更ながら思い出した。
館内にはアンドレ・プットマンをはじめ著名な建築家やインテリアデザイナーによるレストランやバー、客室、そして国内外の新作映画の鑑賞なども楽しめる「シネマラウンジ」もある。
ちなみにこちらは「プロジェクトG」と称され1,200万ユーロをかけ、約2年がかりの館内改装計画も指揮するインテリアデザイナーかつ世界でも有名なアンティークコレクター、アクセル・フォヴォルトが手掛けているとのことだ。
というわけで、実在のホテルを撮影舞台に、まるで「嘘」のような実話が繰り広げられる本作。締めくくりに、実在する主人公であり、原作者のサリヤ・カハヴァッテの感動的コメントの一部をシェアしたい!
❝僕は障がいをハンディキャップとしてではなく挑戦と受け入れ始めた…❞(本作プレス資料より)
1月13日、新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
©ZIEGLER FILM GMBH & CO. KG, SEVENPICTURES FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH
配給:キノフィルムズ
「ミラクル&ハッピー・シネマ2018」をテーマに贈る「CINEMATIC JOURNEY」。次に向かう先も再びドイツはミュンヘンが舞台の映画『はじめてのおもてなし』
前作にもちらりと登場した、いかにも現代のドイツらしい難民の話題に、夫婦も、親子も、それぞれの気持ちがバラバラになっている家族構成という、これまたドイツに限らず現代社会を反映しているテーマが合体した本作。
物語はそうした要素が盛り込まれた、裕福ではあるけれど壊れかけた家庭に、「難民の青年を受け入れる」という母親の宣言から始まるヒューマンコメディだ。
冒頭にも記したように、2020年に向け、ここ東京でも「おもてなし」という言葉を頻繁に目や耳にするが、国際社会といえども実のところ、多国籍文化を正しく理解することはハードルが高く、気づけば相手を思いやっているつもりが、自分目線でであったりもするかもしれない?と、本作を鑑賞しながら、自問自答したくなる方も多いのではないかなと思う。
また本作同様、身近な関係にこそ、相互理解が及んでいなかったりするものではないかと。ひょっとすると登場人物の中に、「自分とそっくりさん」がいたりして(笑)
1月13日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
©2016 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG / SENTANA FILMPRODUKTION GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH
「ミラクル&ハッピー・シネマ2018」がテーマの2018年最初の「CINEMATIC JOURNEY」。
最後に向かうのは、前述のドイツの夫婦同様、半世紀という長~いキャリアとはいえお互いの全てを理解しているのか否か(?)な夫婦が、キャンピングカーでアメリカを縦断するロードムービー『ロング,ロングバケーション』。
末期ガンの妻(ヘレン・ミレン)と、認知症進行中の元文学教授の夫(ドナルド・サザーランド)。
ボストンの自宅から、夫が敬愛するヘミングウェイの家があるアメリカ最南端のキーウエストへと、愛車のキャンピングカーで向かうという、かなりワイルドで、刺激的で、そして愛おしい人生の旅物語。
主演の2人の名前を見ただけでも、その味わい深さの予測はつくと思うのだが、なんと監督は「母国での映画製作にしか興味がなかった」とも称されるイタリアを代表する監督の一人、パオロ・ヴェルズィ。そんな彼の不可能とも思われる主演2人の夢の共演が実現することになり、完成したという本作。そのすべてが下記、監督のコメントに集約されている。
❝ワタシを魅了し、感動させてくれた二人の役者と一つの経験を分かち合えたことが何より嬉しかった。
それがあったからこそ、イタリアの監督として、生涯に一度は荷物をまとめてアメリカに映画を撮りに行けたのだろう❞(本作プレス資料より)
2018年1月26日(金)TOHOシネマズ 日本橋他全国順次ロードショー
©2017 Indiana Production S.P.A.
配給:ギャガ
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中