モードとシネマの未来像17/18(宇佐美浩子)

2017/12/26 15:00 更新


2017年もさまざまな視点からシネマを見つめ、読者のみなさまとその感動をシェアさせていただいた「CINEMATIC JOURNEY」。新たな顔の登場あり、驚くべき秘話あり…と、未来へと続く映画文化を創造していく醍醐味を実感した1年でもありました。

そんな2017年の締めくくりに選んだテーマは「モードとシネマの未来像17/18」。まずは全米でベストセラーを記録した、ニューヨーク・ポスト紙の記者、スザンナ・キャハラン自身の実体験を綴ったノンフィクションの映画化『彼女が目覚めるその日まで』をご一緒に。


唐突ではありますが、この記事をお読みくださっている方の中に、1970年代の大ヒット作『エクソシスト』をご存じの方はどれほどおいでだろう?

驚くべきことに、この作品の主人公(=悪魔にとり付かれた少女)のモデルとなった実在の少年と、前述の本作ヒロインが闘った原因不明の病が同一だったそう。

病名は、2007年に急性脳炎の一つとして位置づけられた「抗NMDA受容体脳炎」。

一見、不治とも思えてしまうこの病に、決して屈することなく再起を信じ、大きな愛で見守る両親、そして恋人。また彼らと共に諦めることなく最善を尽くした医師たち。

本書に心深く感銘を受けた女優シャーリーズ・セロンがプロデューサーとなり実現したという、多くの愛と情熱のもと完成した作品だ。


❝野心家で、自分が何を求めているのか、ちゃんとわかっている女性。病発症前の彼女は、私のよう❞ (本作資料より)

と語るのはヒロインを熱演するクロエ・グレース・モレッツ。

彼女が挑んだ難役ともいえる本作出演について、次のように

❝一生に一度出会えるかどうかの役だと思った。病気を患っている人について、多くの固定観念があるけれど、それを壊すような役❞ (本作資料より)

スザンナ、シャーリーズ、そしてクロエ。三者三様に情熱的でハンサムな女性トリオの未来に、更なる夢を託したくなった☆☆☆


『彼女が目覚めるその日まで』

角川シネマ有楽町ほかにて全国ロードショー

© 2016 On Fire Productions Inc.



さて、ヒロイン役のクロエがアメリカン・ラグジュアリー・ブランド「コーチ」のアンバサダーとしての顔を持っているのはご存知?


ひょっとすると「あ、このポスター見たことある!」という記憶があるのでは?

2016年に発売になったコーチのフレグランス(日本では2017年)の広告だ。

フレッシュ&ナチュラルな香りのするクロエが醸しだす雰囲気は、言うまでもなく「コーチ」イズムを体現したかのようなアメリカン・ガールそのもの。

ニューヨークへと向かうロードトリップへの旅立ちをイメージした広告キャンペーンの撮影は、かの有名な写真家、スティーヴン・マイゼルによるものだそう。

下記イメージムービーも是非ご覧あれ!



モードとシネマの未来像17/18」をテーマに贈る「CINEMATIC JOURNEY」。ぐるりと周遊したこの1年のゴールはやはりここ日本で✈


その名も『リベンジgirl』

マンガチック(?)なほどに誇張された、桐谷美鈴演じるヒロインが次第に愛おしくなってしまう本作。「宝石美輝=たからいしみき」という名前も笑みがこぼれてしまう。さて、そのラブコメとは?

東大主席卒業、ミスキャンパス・グランプリ…「完璧すぎ?」と思いきや、鼻持ちならない性格が欠点のヒロイン。

公私ともに順風満帆の日々にある日、想定外の大失恋が訪れる!これを機に彼女の「リベンジ」プロジェクトが開始となるワケだ。

目標は、これまた大きく総理大臣就任!気になるその結末はいかに?


実は、本作の魅力をより一層輝かせてくれる秘密がある。それは「特別協力」としてクレジットされているラグジュアリー・ブランド「ブルガリ」

ヒロインが身に着けているジュエリーのみならず、リベンジ作戦開始前の社会人のスタートもブルガリという設定だ。

中でも、スクリーンにしばしば登場する1999年、ミレニアルを記念して誕生したアイコンジュエリーこと、ブランド名の頭文字“B”と、無限の始まりや永遠の時間を表す“ZERO 1”に由来したネーミングの「ビー・ゼロワン」コレクション。

❝そのデザインはローマの偉大なコロセウムの圧倒的な尊厳とあらゆるモニュメントの不変性、そして近代イタリアンデザインの力強いラインを融合した❞(資料より引用)

と知れば、そのタイムレスでジェンダーレスな魅力に納得がいくはず。

そしてさらに、こんな情報も…

劇中でヒロインが゙重要な場面で゙必ず身に付けているのは、3色の18Kゴールド(イエロー、ピンク、ホワイト)が奏でるハーモニーが素晴らしい「パーフェクトミステイク」と名づけられたネックレス。コレクション誕生時に提案をされながらもこれまで商品化に至らず、幻となっていたデザインだったそう。

❝最初は見過ごされた、または偶然の出来事に思えたことがよりパーフェクトなものにつながることもある❞(資料より引用)


そんな秘められたストーリーとともに、モダニティと優美さに溢れる輝きが魅力のネックレスが、ヒロインとパーフェクトにマッチしている。

ぜひスクリーンでご確認あれ!


リベンジgirl

12月23日より全国公開中

©2017『リベンジgirl』製作委員会


さて、先日も繊研新聞本紙にてご紹介した通り、今年もファッション関連のみならず、ファッションデザイナーのドキュメンタリーが多々公開された。

そして来たる年も、『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』が待機中だ。

ところで前述のイタリアン・ジュエリーの話題同様、イタリアのファッション業界における新たな動向に昨今、注目している。

先日、イタリア大使館貿易促進部主催のもと東京・表参道で行われた、ミラノ・ファッション・ウィーク会期に合わせ、年4回開催されているミラノ市後援のトレードショーWHITEを紹介する日本初のプレゼンテーション。

2000年に誕生して以来、実験色の濃いブランドのショーウィンドーとして評判を高め、今では国際性ゆたかな催しとして知られるようになったという本展。

その際、最も記憶に残ったフレーズがある。

❝ファッションからデザイン、音楽からアートに至るまで、さまざまな文化が一つとなった『ハイクオリティな表現の場』❞

前述の映画にも登場したイタリアン・ブランドしかり、映画も、ファッションも、アートも、そして国の垣根も超え、融合と進化を続けていくからこそ生まれる何か。

そんな何かが、新たな年の幕開けに開催される「ホワイト・マン&ウーマン」(1月13~15日)にて、目撃することとなるのかもしれない☆





うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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