ロードムービー×ファッション(宇佐美浩子)

2017/08/29 16:30 更新


ひところ、❝Road Movieって、なんかカッコイイよねぇ❞というような風潮があった。

今でももちろん、そうした気分になる映画に出会うことは多々ある。

さりげない着こなしの中に、こだわりが光るファッションと音楽。

そして流れゆく映像との絶妙なハーモニー♬

当連載テーマである「CINEMATIC JOURNEY」も、実はそんなDNAがどこかに潜んでいる。

さて、時を遡ること若手ラジオウーマンをしていた頃、「オトナ」気分満載の「Road Movie」のマスターこと、ジム・ジャームッシュ監督にインタビューをさせていただく機会が訪れた。

ものすごく緊張した面持ちで挑んだ私に、なんと監督自らリラックスして会話ができるようなムードを演出して下さったように記憶している。

「さすが一流の監督って、違うなぁ~」

とものすごくカンゲキした思い出が…。そんなジャームッシュ監督の最新作2本が立て続けに公開になる。そこで今回の「CINEMATIC JOURNEY」のテーマは、「ロードムービー×ファッション」に決定!




まずは、ジャームッシュ監督色満載のパターソン

何気ない日常を描く独特のスタイル感が「いかにも!」な本作は、ニュージャージー州パターソン市のバス運転手パターソン(アダム・ドライバー)という設定からまずは最初のニヤリが始まる!




妻ローラを愛し、詩を書くことが好きな彼。

ほぼ変わり映えのしないように見える、ゆるりとしてテンポで過ぎ行く日々の暮らし。

そのわずか1週間の中で起きる出来事に愛犬も加わるなど、何かと意味深だったりして。

ちなみにこの愛犬役の元援助犬、イングリッシュ・ブルドッグのネリー。彼女はなんと本作で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドッグ賞を受賞!是非その名演をスクリーンでご堪能あれ。




ところで、『ミステリー・トレイン』から27年ぶりにコラボした監督と永瀬正敏。

彼のために書いたというシーンの美しい出来栄えに、心から喜ぶ監督。

そんな熱い信頼関係で結ばれる二人だからこそ思う永瀬的ジャームッシュ感とは?。


❝ジャームッシュ監督はとても色彩設計にこだわりを持っている方で、
本作では藍色がくすんだようなブルーの使い方がとても美しくて、印象に残っています。
たとえばパターソンの着ているユニフォームや僕のスーツも、ブルー系ですし。
ちなみに前作の『ミステリー・トレイン』の時は、「真っ白」というのが好ましくなかったようで、
白いシーツもグレーに染めたりしていたくらいです❞


参考までに、永瀬さんが着用された衣装については下記のようなコメントが(本作関係者談)。


❝衣装合わせの時に、ハイブランドから古着に至るまで、実にバラエティに富んだ
おびただしい数のスーツが集められていて、その中から監督とスタイリストさんが
気に入ったものを選んで、実際、僕が着用したわけですが、
確か50~60年代のヴィンテージものでしたね。
 メガネも同様にヴィンテージで、監督自ら
「これが似合うと思うんだけれど、どう思う?」って尋ねてくれて決めた感じです❞


ジャームッシュ監督のディティールへのこだわりには、やはり大きなニヤリに尽きる☺

皆様ともそんな数々をシェアできたら…。




パターソン』 

ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開中

Photo by MARY CYBULSKI ©2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved. 



それからもう1作の監督作品については極々イントロ的に!

ジャームッシュ監督と言えば、やっぱり音楽も切り離せない重要な要素であることは明白なのだが、本作ギミー・デンジャーはまさに音楽そのもの!

というのも監督自らがファンである伝説のバンド、ザ・ストゥージズの真実を描いた作品だから。

おそらく音楽通の方ならきっとご存じの、超個性的ファッションセンスでも知られるイギー・ポップが1967年に結成したバンドで、かつまた彼のミュージシャン人生の出発点なのだそう。

そんなイギーを役者として『デッドマン』、『コーヒー&シガレッツ』に起用するなど、親交を温めてきた監督。

そうした中、イギーから「ザ・ストゥージズの映画を撮ってほしい」との申し出を受け、実現した1作が本作という。

ではその全貌は劇場にて。




ギミー・デンジャー

9月2日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

©2016 Low Mind Films Inc.



「ロードムービー×ファッション」をテーマにご紹介している8月後半の「CINEMATIC JOURNEY」。ゴールに向かう前の予習として、ここでぜひご覧いただきたい展覧会の話題を。


© Raymond Depardon / Dalmas-Sipa Press 
J.O. Tokyo 1964


9月1日から10月1日まで、東京・銀座の「シャネル・ネクサス・ホール」で開催のレイモン・ドゥパルドン写真展「DEPARDON/TOKYO 1964-2016」

フランスを代表するフォトジャーナリスト、そして映画監督としても活躍する氏は、報道分野においての数多くの功績を残しており、その一つ、チャドを取材した仕事は高く評価され、ピューリッツァー賞を受賞するなど、常に妥協なき姿勢で挑む瞬間に、観る者の心を揺さぶる。

またその一方で、世界各地で目にする飾らない日常の一コマをとらえた作品も彼の活動の一部であり、それはまた氏の別の側面として、人々のキモチを潤してくれる。

本展は、氏が22歳の駆け出し写真家時代に、初来日した1964年の東京オリンピックの取材時に撮影した2000点以上ものモノクロ作品からのセレクションと、匠の視点から昨年、新たにカラーで撮りおろした東京の街。

そんな氏の日本初となる個展が、遂に実現する日を迎えた!



そしていよいよ今回のゴールとなるシネマ旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランスに到着!

タイトルのネーミング通り、前述の写真家と、妻であり自身の映像作品の製作や録音を担当してきた公私にわたるパートナー、クローディ-ヌ・ヌーガレが共同監督を務める本作は、


❝世界中を旅したフィルムのかけらで、1本の映画をつくること❞


そんな写真家の夢を、妻の愛(夫の膨大なフィルムを整理して映画に編集)で結実した。



アラン・ドロン、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメール、ジャン・ルーシュ、ジャック・シラク、ネルソン・マンデラ、マリー・リヴィエール、ミレイユ・マチューなどなど名だたる人物のみならず、世界のさまざまな側面をフォトジャーナリストとして捉え、報道するシーン。

また一方で、「フランスのピュアな美しさ」というイメージが似合う、風景写真家のような一幕もまた印象深い本作。

そんな写真家の目の前に現れたある日の撮影現場での出会い。

そして彼女を旅の伴とする、終わりなきロードムービーの始まりを物語る一コマも

どうぞお見逃しなく!




旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス

9月9日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

© Palmeraie et désert – France 2 cinéma





うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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