絹が紡ぐリヨン×日本!光の絆2017(宇佐美浩子)

2017/01/25 17:58 更新


2017年の扉がオープンして約半月くらいが経過しましたが…世界中にキラキラとした笑顔が輝く、そんな1年を願っております。

そして今年もあれこれ趣向を凝らし、シネマを軸にファッション、アート、グルメ…など、(フランス流ライフスタイルと訳されることの多い、お気に入りの表現)「art de vivre」な気分をお届けするCINEMATIC JOURNEYを、皆様とご一緒させていただきたく

というわけで、昨年末の「つづき」として新年のオープニングを飾るCINEMATIC JOURNEY「リュミエール(光)×リヨン16/17」。今回は日本とリヨンをつなぐシルクロード(?!)からスタート✈✈

 

 

 

❝世界にも類を見ないほどのコレクションを有すると言われる織物博物館「Musée des Tissus」も、実はリヨンにあるのです❞

そして、こんな話も耳にした。

 ❝エルメスのスカーフ『カレ』もリヨンで生産しているのですよ!❞ 

昨年末にご紹介したリュミエール博物館同様、たまらなく好奇心をくすぐられる話題に、リヨンという都市の魅力が膨らむばかり(当館に関しては繊研新聞本紙にて2月28日付けカルチャー面にてご紹介いたします)。

おそらく繊研新聞の読者の皆さんなら、当然のことながらご存じの方ばかりのはずですが、リヨンは古くから絹織物産業が栄えた地で、日本との交流の深さでも有名!

思えば2008年のちょうど今頃(1月19日公開となっている)、日本公開された映画『シルク』で、その歴史の一端を学んだような記憶が?!

(舞台となるフランスの地名は明らかではなかったのですが、おそらくリヨンに違いないかと?)

音楽を坂本龍一、また役所広司や中谷美紀など日本人俳優も多数出演した、シルク・ドゥ・ソレイユのいくつかの公演で演出も行っているフランソワ・ジラール監督による作品だ。

ともあれ、なんとも恥ずかしながらやや逆輸入的行動となってしまい情けないのですが、日本の絹織物産業の聖地こと、2014年に世界遺産に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」訪問を昨年師走に実現

 

 
1998年に世界遺産に登録された2000年の歴史を誇る都市形態が特色のリヨンの歴史的地区。その一角、古くから絹織物の盛んな地区クロワ・ルース(Croix-Rousse)にある1890年創業の老舗ブティック「BROCHIER SOIERRIES」にて蚕に遭遇!

 

ちなみに富岡製糸場の建設・操業を指導したポール・ブリュナ氏。やはり彼もリヨンで生糸関連の会社で、その輝かしいキャリアをスタートした人物だと判明!

くまなく当製糸場館内の展示物を拝見していると、「リヨン製」と明記されたものをはじめ、上記の「織物装飾芸術博物館」との縁あるポスターも!また一方、リヨンでも同様に。

 

 


ここで少しばかりアートな話題を

銀座メゾンエルメス フォーラム」にて、2月26日まで開催中の展覧会「曖昧な関係」にて出会った、フランス人アーティスト、アンヌ・ロール・サクリストの上記の作品。その時間の経過を感じる織物の風合いに、心なしかひきつけられ、見入ってしまった。

ラッキーにもアーティスト本人に話を伺うと、ビックリ!

この作品はリヨンの古城「Chateau de Saint Marcel de Felines」から譲り受けた布を用いているというのだ。

 ❝お城のさまざまな記憶を持つ布に、メランコリックを感じている❞(アーティスト談)

 なんとも不思議な縁を感じた次第.

 

 

 

ここで再び、1895年にシネマトグラフを発明した「映画の父」ことリュミエール兄弟ゆかりの地、「リュミエール博物館」&「リュミエール研究所」に戻り、彼らの偉業にまつわる新作『ショコラ』の話題を。

が、その前に少しばかり手前味噌的な写真(上記と下記)と共に、数知れない写真機材や世界初の実用カラー写真「オートクローム」を開発するなど、彼らの革新的チャレンジに感動と敬服をシェアさせていただきたい。

 


 

そして、いよいよ本題のシネマ『ショコラ』についてだが

20世紀初頭、フランス史上初の白人芸人フティットと黒人芸人ショコラによる伝説の芸人コンビ「フティット&ショコラ」の成功と苦悩、波乱万丈な人生と熱い友情を描いた実話。

その初の映画化となる本作は、昨年公開になった本国フランスではショコラ役オマール・シーの出世作『最強のふたり』を超えるコンビものとして話題を集め、また日本の公開は奇遇なことに、ショコラ没後1世紀にあたるという、明るい「光」のサインが…

なおフティット役は、実際に本作同様、サーカスでのキャリアがあるジェームス・ティエレ。かの喜劇王チャップリンの孫!という、まさしく最強のコンビによる共演作なのである。

 

 

 

ちなみに実在の彼らはロートレックの絵のモデルとなりキャンバスに描かれ、またゴダールは『気狂いピエロ』で彼らの名をタイトルにした曲を、フェリーニは「フェリーニの道化師」で彼らの芸を再現し、そして…

❝リュミエール兄弟の映画にも実際に出演した❞

  

 
1月21日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

(予告編)

 

というわけで、昨年末に「つづき」、2017年のオープニングを飾るCINEMATIC JOURNEY「リュミエール(光)×リヨン16/17」。

 

 

 

締めくくりにはぜひ、この方の「映画とリュミエール(光)」にまつわるコメントを皆様とシェアさせていただきたく思います。ご登場いただくのは、昨年度のリヨン「光の祭典」「レシリュムトロフィー」を受賞した照明デザイナー、石井リーサ明理さん。

 ❝私が照明デザイナーになろうと思ったきっかけは、フランスのデザイン学校へ留学していた時なんです。

 お世話になった照明デザイナーの方が、ヌーベルヴァーグの頃に頻繁に使われていたニースの映画スタジオを経営されているご家族の一員で、私が「照明に興味がちょっとある」と話したら、映画館に連れて行ってくださり、白黒映画を鑑賞しつつ、いろいろ解説していただいたのです。

 そこで初めて「白黒映画というのは光と影でできている」 ということを学びました。たとえばちょっと帽子の影が目にかかることによって、彼の悪意を表現しているとか…心理表現のシンボリックな部分を言及されていて、大変興味深かったことを記憶しています。 

映画というのは私にとって「光の教科書」みたいなもの、そのように思っております❞

 

 
2016年リヨン「光の祭典」にて、ご自身の作品「PLATONIUM」を見つめる石井さん(右下)

 

☆further info.

「ONLY LYON」フランス観光開発機構




うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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