「夏だ!祭りだ!お休みだ!」と、気分だけでもアップしたいと思うこのごろ。観たい映画も、イベントも、アレコレ目白押しな季節が、今年もやって来ました。
とりわけ夏生まれの私は、「やっぱり夏が好き!」なのです。
というわけで、7月は2回に分けて、そんなリストアップを勝手ながらご一緒に!
真面目な顔して笑いを誘う、フランス映画界きっての人気役者ファブリス・ルキーニ。
今作『ボヴァリー夫人とパン屋』でも、得意のプチ・アイロニカルなフレンチスマイルを存分に提供してくれる。
長年の友人でもあるというアンヌ・フォンテーヌ監督(「ココ・アヴァン・シャネル」ほか全て監督&脚本兼務)が抱く主人公のイメージ「フランス版ウディ・アレン」さながらに…
さてそのストーリーとは?
フランス文学の傑作「ボヴァリー夫人」をこよなく愛する、文学好きなパン屋の主人マルタン。
パリでの出版社勤務を経て、故郷ノルマンディー地方(愛読小説の舞台と同じ)に戻り、家業パン屋を継ぐことになった。
そんなある日、こともあろうに向かいに越してきたイギリス人夫妻の名字がボヴァリー、おまけに妻の名は小説のヒロイン同様「ジェマ」というのだから、もう大変!
ご近所付き合いから発展し、いつしか妄想の世界へと旅するマルタン。登場人物たちとの絶妙なアンサンブル、そして思わぬ結末まで、観客の笑いのツボをしっかり押さえている。
なお原作は、イギリス人絵本作家ポージー・シモンズのグラフィック・ノベル「Gamma Bovary」。
参考までに、先日来日された監督の話によれば、実生活でもファブリス・ルキーニは大の「ボヴァリー夫人」好きで、その昔、監督と初のディナーの席でも終始、その小説のみだったとか。
ところで、「グラフィック・ノベル」という言葉を初耳された方に向け、ここで簡単にご紹介を。
諸説あるようだが、ポイントは従来の漫画とは異なり、文学的な内容を含んでいる、アメリカで誕生した言葉というのが一般的のようだ。ご参考までに。
それではここで少し、アート・ブレイクを。
というのも、前述のグラフィック・ノベルという言葉と、どことなくクロスするフランス語圏の芸術性の高いマンガ「バンド・テシネ」。
© Hugo Yoshikawa
実は現在、銀座にある「シャネル・ネクサス・ホール」で7月20日まで開催中の展覧会「Le voyage de Taka et Yukimi – タカとユキミの冒険旅行」。その作家である新進気鋭のアーティスト吉川有悟がわずか10歳にして、アートの道を歩むきっかけとなったのがバンド・テシネとの出会いだったから。
さて旅をテーマとする本展は、幼少期から世界各地で暮らしてきたご自身の背景と重なる地、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京などをはじめとする都市が、これまでのスタイル(インクと水彩中心のイラストレーション)を超え、アニメーション、インスタグラム、青写真、3Dプリンターまで、新旧さまざまな表現メディアを実験的に用い、平面と立体、静止画と動画、空想と現実の世界をつなぐ、まさに作家にとって初のマルチメディア展なのだとか。
ちなみに、本展のタイトルにもなっているタカは自身の分身、またユキミは幼なじみ、とのこと。
そんな予備情報もあってか、オープニングに際し、ロンドンから来日された作家を目の前にした瞬間、タカのフィギュアが語りだしそうな錯覚に(笑)。
さりげなく香るpopなテイストが似ていたのかも!?
というわけで、思わずウキウキ楽しくなってしまう作品の数々と空間構成が、つかの間のヴァーチャル・サマーヴァカンス体験になりそう。
© Hugo Yoshikawa
ここで再び、シネマの話題に。
「韓国史上初の欧米小説の映画化」というキャッチの『犬どろぼう完全計画』。
原作はペアレンツ・チョイス賞ほか数々の受賞歴に輝く、アメリカの作家バーバラ・オコーナーによるベストセラー小説。
注目すべきは、物語の随所に挿入される心和むアニメ。
いずれも楽しいだけでなく、視覚的にも理解度をアップさせてくれるので、夏休みの親子向けシネマとしても活用できそうな予感。
また作品により一層の魅力を添えるのが役者たち。
中でも少女らしいアイデアで家族愛に挑むヒロイン役のイ・レの演技力に対し、監督は「神に恵まれた表情を持つ」と大絶賛。
ちなみにエンディングの楽曲「Home Sweet Home」を歌っているのも彼女だ。
そしてさらに驚くのは、リュクスなマダムの愛犬ウォーリーにすっかりなりきった2歳のジャックラッセルテリア。「映画デビューにして、CG無しの演技力」と聞けば、拍手喝采したくなるはず。
こうして、まだまだ尽きないイントロですが、あとはぜひ劇場にて!
・・・Vol.2へつづく!
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中