「Café de Flore」。この言葉の響きに、すぐさまパリの街角をイメージする。と同時に気分はパリのカフェ・タイム。
そんな数多あるパリのカフェでしばしば目にするのが、フランス生まれの家具ブランド「フェルモブ」のBistroチェア。
とりわけ昨年の当チェア誕生125周年を迎えた折、同じく125周年を祝ったエッフェル塔を、324脚のチェアを用いて再現したビジュアルは記憶に新しい。
というわけで、YEBISU GARDEN CINEMAオープニング作品として間もなく(3月28日)公開になるのがヴァネッサ・パラディ主演の「カフェ・ド・フロール」。
1960年代のパリに生きるシングルマザーとダウン症の息子、片や現代のモントリオールを舞台に人気DJの男が出会う運命の女。全く接点のないはずの2つの物語が、タイトルと同名のマシュー・ハーバートの名曲により、時空をつなぎ、スピリチュアルなラブストーリーへと進化を遂げる。
ちなみに歌手としても活躍するヴァネッサは、その独特な歌声と共に10代初めにキャリアをスタート。つまり女優よりも長いキャリアを保持し、アルバムをリリースする度に話題を集めている。かくいう私も彼女の音楽ファンの一人だ。
またご存じのごとく、シャネルのCMにも登場するなど、ファッション・アイコンとしても注目を集める彼女。60年代パリに生きる凛とした母親を演じるその姿に、これまで以上に香り立つ熱き女優魂を感じとるのは、きっと私だけではないだろう。
『カフェ・ド・フロール』
3月28日より恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開予定
© 2011 Productions Café de Flore inc. / Monkey Pack Films
ここで、次のシネマ紹介に移る前に、現在全国順次公開中の「パリよ、永遠に」を仏独の架け橋として少しばかり、触れておきたい。
冒頭にも登場した125歳を誇るエッフェル塔も、「ホテル・リッツ・パリ」や「ホテル ル・ムーリス」など名だたる老舗名門ホテルも、オペラ座も、ノートルダム大聖堂も ―― かのヒトラーさえも魅せられた美しき都市、パリ。その街を破壊するという作戦から、見事な駆け引きにより守り抜いた一人の男がいた。
そんな歴史的重要な一夜を今日へと継承する物語を、私たちは本作を通じ、学ぶこととなる。それはまた一人のフランス人外交官とドイツ人将軍の永遠の絆へと、カタチを変えていくのであった。
恥ずかしながら歴史女子(?)ではなかった私は、さまざまな歴史上の出来事に秘められた人と人が紡ぐ心あるストーリーが、未来の扉を次々と開いていくことの素晴らしさを、私は「シネマが教えてくれる」リストに書き連ねていきたいと思っている。
それではここで、フランス映画からドイツ映画へとバトンタッチを。
ドイツ映画賞史上最高齢の78歳で最優秀主演男優賞に輝いた、国民的喜劇優ディーター・ハラーフォルデン。受賞作となったのは、元オリンピック選手のランナー役を好演する「陽だまりハウスでマラソンを」。
年齢性別に関係なく、観る者のハートにスイッチが入るような感覚を味わえそうな本作は、さまざまな背景を持つ人々のいわばシェアハウスともいうべき老人ホームに、夫婦で入居した主人公パウルが、元気さ余ってベルリン・マラソン出場を決意するという、ヒューマン系ホッコリ、楽しい物語。
突如として走り出した彼に対し、当初は周囲も拒絶反応を示していたのだが、やがてチーム一丸となって完走の夢に向け、連帯感が芽生えていく。果たしてベルリンの天使は微笑んでくれるのだろうか?
時として人は「もう年齢が年齢だから、ちょっと派手な色の服やトレンドを追うのは・・・」とか、「今からじゃ何かチャレンジなんて無理よ」とか、NGワードを連呼しがちだが、「ライフスタイルとエイジングは決してイコールではない」と本作のキャラクターたちが体現しているかのよう。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中