「味覚」を「視覚(シネマ)」で学び楽しむ(宇佐美浩子)

2014/10/16 14:06 更新


今年で4回目となるフランス発、味覚教育イベント「味覚の一週間」(1020日~26日)。本国では25周年を迎える国民的食育活動として知られている(1013日~19日開催)。

とりわけ両国ともに「食」がユネスコ無形文化遺産に登録されていることもあり、小学生から大人まで、五感をフル活用して味わうことの大切さや楽しさを、国内外の有名シェフや料理人直々に伝授いただける素晴らしい機会となっている。




 さて「食欲の秋」という季節的ムードも伴い、そうした味わいあふれるシネマに、より一層ココロ魅かれる。そこでまず最初にシェアしたい作品は、『マダム・マロリーと魔法のスパイス』。

おそらく一人の人間の味覚のルーツとなるであろう家庭の味と、一流レストランの洗練の味わい、そのいずれも比較にはならない感動と愛情がたっぷり詰まっている。だが本作ではさらに、マダム・マロリー(ヘレン・ミレン)が経営する小さな村の星付きフレンチと、その向かいに突如開店したインド人家族が営む庶民的料理というおまけつきだ。


 


 
時にスパイシーだけどヒューマンな物語は、さまざまなデリシャスシーンと数々の偶然の巡り会わせと共に、観る者の五感を刺激してくれる。そして全く異なるテイストのフュージョンに挑む「おふくろの味」をバイブルとするインド料理店次男でシェフのハッサン。彼の料理と人生における熱き思いには、きっと拍手を贈りたくなるのでは。


 

 
参考までに、何週間にもわたりリサーチを重ねた末に行き着いたというロケ地は、冒頭の「味覚の一週間」発祥の地フランス、その南西部に広がるミディ・ピレネー地方。美しい自然や歴史が香る風景、バラエティーに富んだ品種で注目のご当地ならではのワイン、そしてオイシそうな「食」の数々…視覚的旅の魅力も満載だ(写真下参照)。



マダム・マロリーと魔法のスパイス
111日より全国公開予定。
© 2014 DreamWorks ll. Distribution Co. All Rights Reserved.


一方、日本の食卓も忘れてはならない。向井理と片桐はいりの掛け合いが絶妙な『小野寺の弟・小野寺の姉』。


 


 個食化が進むといわれる昨今の日本だが、姉一人、弟一人の小野寺家の食卓は、ほぼ決まって、温かな手料理を共食するのが日課。一見、フツウの家庭料理が並ぶ食卓の光景も、時代と共に変化していることを実感するかもしれない。

ここで、その筋書きを簡単に。

両親を亡くしてから20年以上、のんびり気ままな二人暮らしを続ける、「ピュア」が過ぎて笑いを誘ってしまいがちな行動が、半ば愛おしくもある姉と弟。そんな彼らの日常に迷い込んだ宛先ミスの手紙。それがきっかけとなり、古い一軒家をやんわりと包んでいた緩やかな空気に変化が生じる。果たして小野寺家の二人の未来はいかなる方向へ進むのだろう。

なお、主演の二人をとりまくユニークな人物像を演じる俳優陣(及川光博、山本美月ほか)も、後味豊かに余韻を残す。


 
1025日より新宿ピカデリーほか全国公開予定。
©2014『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会

 



うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



この記事に関連する記事