バーガンディに染まる晩秋(宇佐美浩子)

2018/11/25 06:25 更新


「ワインのようなレッドをバーガンディ(burgundy)」ということを知ったのは、FMラジオ番組制作者として若葉マークの頃、ポール・スミス氏を取材した時のこと。

以来その深みのある色合いが好きになり、自身の名刺にも使用することしばしば。

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さて、11月も終盤を迎え、そろそろ年末の乾杯シーズンへと向かう中、フランス語ではブルゴーニュ(Bourgogne)というこの色にちなみ、今回の「CINEMATIC JOURNEY」は『おかえり、ブルゴーニュへ』からスタート!


フレンチシネマ好きなら、必ずやこの監督の名をご存じのことと思う。セドリック・クラピッシュ。ワインにも似たふくよかな人間味にあふれたタッチが人気の彼らしい本作。その舞台はタイトル通り、ブルゴーニュのワイナリー。さてそのストーリーはいかに?

世界を旅するという口実で、家業のドメーヌに背を向けるかのように家を出たきり10年もの間、音信普通だった長男だが、余命わずかな状態にある父を見舞うため帰郷。後継ぎとなった妹、婿養子として別のドメーヌの後継者の道を歩む弟。気まずい再会に加え、父の死、さらに幾度となくぶつかり合いながらも家族の絆を深めていく3人。

自然との共生から育まれるブドウとワイナリーが歩む貴重な1年の移ろいの中で、時にリンクしながら、スクリーンをバーガンディに染め上げてくれる。


ちなみに前述のドメーヌとは、「自らブドウ畑を所有し(畑の賃借も含む)、栽培・醸造・瓶詰を一貫して行うワイン生産者」(本作資料より)のこと。

また本作同様、ドメーヌの主として活躍する女性たちに取材をするチャンスがあるのだが、毎度実感するのは、愛情たっぷりにブドウを育て、それぞれのスタイルでワインへと完成させる彼女たちの情熱!

それは本作の資料で目にした、クラピッシュ監督のコメントにもあるように、

“元々ワインボトルには、まさに、人間であるとはどういうことなのかが詰まっているのです”

実のところ、監督がブルゴーニュワインを親しむようになったのは10代の頃というのだから、かれこれ40年程のキャリアになるわけで。その知識に加え、俳優とワインメーカーという2つの顔を持つジャン=マルク・ルロという貴重な存在も伴い、本作はかなりのビンテージモノと言えそうだ。


『おかえり、ブルゴーニュへ』

ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEAほか全国順次公開中

©2016 - CE QUI ME MEUT - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA


「バーガンディに染まる晩秋」がテーマの11月終盤の「CINEMATIC JOURNEY」。次の目的地に向かう前に、少し寄り道を…

今月19日から26日までイタリア文化会館にて開催のユネスコ世界自然遺産候補として知られるイタリアの代表的スパークリングワイン、DOCGプロセッコ・スーペリオーレの産地に見る美しい景観と、ブドウ栽培に従事する人々を撮った写真24点ほかで構成された写真展「プロセッコ・スーペリオーレの故郷 コネリアーノ、ヴァルドッビアーデネの風景」の話題。

イタリア文化会館にての写真展風景/©h.usami

本展では思わず息をのむ、5人の写真家が撮影した、この地を象徴する急斜面に広がる、まるで緑色の絨毯のようなブドウ畑の連なり。

そして話には聞いていたものの、想像を絶する険しい大地ゆえ、手作業で行わざる負えない作り手の努力の結晶に心から敬意を表したくなる。と同時に、より一層の口福感に満たされるであろうDOCGプロセッコ・スーペリオーレの数々。

“プロセッキアーモ (アペリティフにプロセッコを飲んで帰ろう)!”

という80年代にイタリアで流行った耳心地よいフレーズが、クセになりそうだ!

©h.usami

「バーガンディに染まる晩秋」がテーマの11月終盤の「CINEMATIC JOURNEY」。ハッピーエンドな香りが漂うゴールとなるのは、『おとなの恋は、まわり道』


4度目の共演作という、すっかり「おとな」になったウィノナ・ライダーとキアヌ・リーブス。脚本を気に入ったウィノナが、キアヌに脚本を送った事で実現したという本作は、長年にわたる二人の友情があったからこそ、一層の深みと苦みが絶妙にブレンドされ、大人の味わいに仕上がっている。

そして舞台の一つとして登場するワイナリーは、5世代にわたり同じ家族が所有する、カリフォルニア州パソロブレスにある320エーカーほどの「デュボ・ワイナリー」。地元でも人気の小規模系ワイン畑婚として、注目のアドレスなのだそう。


『おとなの恋は、まわり道』

12月7日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ショウゲート




うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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