見た目も愛らしい干支「うさぎ」年の2023年。さまざまなシーンで見かける「うさぎ」たちの中でも、珍しいタイプの展示を目にした。
「初春を祝う―七福うさぎがやってくる!」という、なんとも楽しさが伝わるタイトルの本展は、昨年10月に東京、丸の内の重要文化財「明治生命館」1階に移転・開館した静嘉堂@丸の内にて、2月4日まで開催中だ。
目にしているだけでもほほ笑ましく、うさぎのようにピョンピョン飛び跳ねたい気分へと誘われる「福をはこぶ七福神と子供たち、兎の冠を戴く総勢58体の御所人形の一大群像」。
これらの人形は、当ギャラリーゆかりの人物こと三菱第4代社長、卯年生まれの岩﨑小彌太氏の還暦を祝して、孝子夫人が京都の人形司・丸平大木人形店の五世大木平藏に依頼して制作させたものだという。また新春にふさわしい日中の絵画・工芸品の数々も見応えあり。
という夫婦の「愛」と芸術文化への情熱に包まれた展覧会の話題からスタートした新年初の「CINEMATIC JOURNEY」のテーマは、「愛」。それも今、世界的に再来気分傾向にあるといっても過言ではない、あの感動の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』にみる映画への熱くて深い愛だ。
そこで、2023年の幕開けは「シネマ『愛』が世界を包む」をテーマに、注目のインド発『エンドロールのつづき』の旅をご一緒に!
リュミエール兄弟、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・リーン、そして「大好き」と称すアンドレイ・タルコフスキーほか、国籍も世代も異なる監督たちの名が連なる「道を照らしてくれた人々に感謝を込めて」とクレジットされた、本作監督兼・脚本を手掛けたパン・ナリンによるリストがたまらなく印象的な本作。
実話とは知りながらも、監督自身の物語の映画化というのだから更なる感動が高まる。9歳の少年が、父のチャイ店を手伝う中、映画初体験から芽生えた映画への愛。そして歩むべき映画界へと歩み出す大きな愛は、当初アンチであった父、料理上手な母から…
劇中に登場するオマージュを捧げた映画監督は、前述に列挙された方々をはじめ、発見の楽しみにも満ちている。
加えて、その演出も興味深い。それらはカラフルな衣装やヘア・メイクにも表現されており、インド特有の文化的色彩を味わえる。また料理上手な母お手製のメニューの数々からも香り立つ。
とりわけ監督の故郷「愛」とも称したいグジャラートへのこだわりのエッセンスが、ご当地ならではのファッションアイテムの一つ、カラフルな「バングル」として存在感豊かに…
お見逃しなく!
『エンドロールのつづき』
2023年1月20日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋ほか全国公開
ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP
ここで参考までに、前述の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督ジュゼッペ・トルナトーレが、本作との縁から結ばれた友愛により完成したさらなる傑作『モリコーネ 映画が恋した音楽家』が現在公開中だ。
あの忘れることのない、温かく包み込まれるようなメロディの余韻を私たちにギフトしてくれた今は亡きマエストロ、エンニオ・モリコーネの遺作とも称すべきドキュメンタリーとも。
P.S.>
祝祭シーズンとも称されるクリスマス直前の昨年12月16日からスタートし、来月のバレンタインデーまで展示されている人気フラワーアーティスト、ニコライ・バーグマンによる花への「愛」にあふれたカラフルなフラワーディスプレーも見逃せない。
前述のシネマに通じる思い「『多様性、人々、自然、感謝、特別』 など」を凝縮し、全てを受け入れる場所、都心の中のリラックス空間であり続けたいという願いを込め、昨年末(同上)にオープンした新たなランドマーク「Otemachi One Garden」にて開催中だ。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中