ワインと映画とブルゴーニュ!(宇佐美浩子)

2022/11/14 06:00 更新


「毎食が最後の晩餐だから赤ワインは欠かせない」

という名言を目にし、深く納得したことがある。その言葉の主は、昨年11月9日に天に召された瀬戸内寂聴さんだ。

訃報の知らせから1年後となる11月11日より公開の『あちらにいる鬼』は、そんな寂聴さんが出家に至るまでの背景を、直木賞作家である井上荒野が実在の人物(実の父、母、そして寂聴)をモデルにつづった小説の映画化だ。

ヒロインは、前回の当「CINEMATIC JOURNEY」の「親愛なる『MOTHER』たち」にも登場した寺島しのぶ。今回も美しくカーブを描いた坊主頭を披露するなど、毎回、感動の熱演に喝采!

そんな折、偶然にも寂聴さんの命日に出会った1本ワインがある。自ら『寂』と命名されたそのワインは、同じく名付け親である岩手県二戸市の名湯「天台の湯」にて購入可能とのこと。


あちらにいる鬼

11月11日(金)全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022「あちらにいる鬼」製作委員会


寂聴さんとワインの話題で幕を開けた11月最初の「CINEMATIC JOURNEY」は、「ワインと映画とブルゴーニュ!」をテーマに、フランスからのゲストも交えて旅してみたく。まずは、現在公開中の『ソウル・オブ・ワイン』の話題から。

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おそらく寂聴さんの晩餐にも、しばしば登場していたであろうと察するロマネ=コンティを筆頭に、フランスのみならず世界的にもワイン愛好家の聖地的存在であるブルゴーニュ。

生産者の献身的かつ真摯に果実と向き合い、ワインという最高の芸術作品が誕生するまでの素晴らしいチームプレーを、垣間見る機会となる本作。一方、その芸術を評するソムリエたちの名言の数々に、思いもよらぬ気づきと感動が混在する。ある種、架空のワインテイスティングの旅時間と言えそうな?


長年に及ぶ職務上、国内外のワイナリーを訪れ取材をさせていただく機会を得たことがある。日頃、体感することのない解放感あふれるブドウ畑という大自然と向き合う時間、「天使の分け前」と共に美酒の誕生を心待ちする母のような樽が並ぶカーブ…

そして本作のエンディグに向かう中、ロマネ=コンティの元醸造責任者ベルナール・ノブレの心に残るフレーズの一部を分かち合いたい!

「瓶に詰められたワインは新しい人生を始める」

「何年もの間、瓶の中で瞑想していたようだ。肉体は消えてしまい、魂だけが宿っている」


ソウル・オブ・ワイン

ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
配給:ミモザフィルムズ
©2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall

 

「地元の知り合いも登場する『ソウル・オブ・ワイン』は、偶然にも来日と重なり、初日に友人たちと鑑賞しました!」

と語られたのは、ドメーヌ・フルーロ・ラローズ、シャトー・ド・パスタンの現当主に嫁いだ日本女性、フルーロ久美子さん。 

1872年設立のブルゴーニュを代表するドメーヌのひとつとして知られ、現在の本拠地は、かの有名なロマネ=コンティが醸造されていた歴史を持つ、シャトー・デュ・パスタン。

地上3階、地下2階の建物の巨大なカーブには グランクリュ・モンラッシェ 1918 から現在のワインまで約6万本のワインが眠っているのだとか。


そんなマダム久美子をはじめ、約3年ぶりにフランス各地の先陣を切って、このほどブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方観光局の来日ミッションのメンバーと対面することとなった。

団長を務める当地域圏議長マリー=ギト・デュフェさん(写真左下の右端)ほか、ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方観光局、ならびにディジョン観光局ほか、いずれも女性たちの活躍が目立つ当地方。

さらに今春5月にオープンした「ガストロノミーとワインの総合博物館」も注目の当エリアを代表する名シェフの一人、今は亡きベルナール・ロワゾー。現在、ソーリューにあるホテルレストランを中心に、ディジョン、ボーヌにもレストランを経営する「グループ・ベルナール・ロワゾ」のバイスプレジデントとして活躍する娘のベランジェ―ルさん(写真左下右から2人目)も、今回の来日メンバーの一人に加わった。

また、フランス料理界のオリンピックとも称される「ボキューズ・ドール」の日本チームのコーチを務め、2013年には3位(日本にとっての最高位)獲得へと導いた、日本との縁も深いドール近郊のホテルレストラン「シャトー・デュ・モン・ジョリー」のミシュラン・一つ星シェフにしてオーナーの、ロミュアル・ファスネさん(写真右下)。少数派となった男性陣の一人として、実物大のご当地グルメ「コンテチーズ」のサンプルを携え、笑顔で参加。

今回の「CINEMATIC JOURNEY」のテーマ「ワインと映画とブルゴーニュ!」と、彼らの来日が偶然の程よいペアリングに!


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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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