1961年、イタリア家具やインテリア小物の輸出を促進するために誕生したと聞く、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」こと「Salone del Mobile.Milano」(ミラノサローネ国際家具見本市)。
かれこれ十数年以上も前のことだが、当時「和」文化を取り入れたデザインを主体に活躍されていた日本人女性建築家のサポーターとして、サローネと同時期にミラノ市内で開催されるデザインの祭典「Milano Design Week」に参加すると共に、市内でインテリアデザイン関連の取材をしたことがある。
偶然にも目にする機会を得た、「和」テイストが香るイタリアン・ライフスタイルの提案に、新たな発見と感動を覚えた日が懐かしくよみがえった。
そこで、今回の「CINEMATIC JOURNEY」は、前回の2022夏旅編「+(プラス)」と称して、今秋公開になるイタリア映画の予習(?)的思いも込めて、「Altaroma発『和×洋』」をテーマに旅します。
2022年夏。同じく国籍はイタリア。都市はローマ。
これまでにも度々、繊研新聞の紙面を始め、当コラムでも筆者が注目してきたSilvia Venturini Fendi女史が代表を務めるAltaroma主催の「ローマ・ファッションウィーク」。
第41回目を迎えた今シーズンは、今月11日から15日まで開催され、ローマとファッションの新たなステージの幕開けを予感させる中、華やかな余韻と共に幕を閉じた。
それはまたAltaromaが抱くファッションを軸とするローマへの愛、さらにグローバルな視点で、ファッションを通じて未来を見据える、といっても過言でないように思う。
過去10年間にわたり、ローマが新たな才能の拠点となるよう、公的機関の心強いサポートを得つつ、ファッション関連のアカデミーやプロ養成機関との密接で「持続可能な」Altaromaの取り組み。その実りの季節を迎えつつあるのではないかと実感する。
とはいえここ数シーズンは世界的状況から、現地へ赴くことがかなわず、今回もオンラインでの参加となった筆者だが、その空気感は確実に伝わってくる。
さて、107のブランドをフィーチャーした今回。デザイナーと直接対面できる機会となる恒例の「SHOWCASE」や、それぞれに趣向を凝らした演出が魅力的なファッションショー(SHOWCASE参加ブランド有)。
またイタリアのみならずヨーロッパでも屈指の名門アカデミーと称される17世紀初頭設立の「the Accademia di Belle Arti di Roma(通称ABA ROME)」を筆頭に、名だたるファッションアカデミーの学生たち180人に発表の場(ショー形式を含む)を提供するなど、「FASHION HUB」としての「Made in Italy」の発展に貢献するAltaromaならではのプロジェクト。
そして今回で、18回目となるヴォーグ・イタリアと共同で組織された最注目企画『Who Is On Next?』。このファッションスカウトプロジェクトの授賞式が、(冒頭から続く画像からも伺い知れる)美しい夜空の下、7月12日に開催された。
ローマ7丘の一つ、カンピドリオにそびえ立つミケランジェロ設計によるカンピドリオ広場 (Piazza del Campidoglio)。広場中央には同じく、ミケランジェロ作マルクス・アウレリウス像、その周囲をカピトリーノ美術館、コンセルヴァトーリ宮殿などが取り巻く、ローマ有数のシンボリックな地で、繰り広げられた「夢のような晩」。その種明かしを、筆者独自の視点でここに!
- 映画や音楽、テレビにラジオ、さらに執筆活動など、多岐にわたり活躍するAndrea Deloguの機知に富んだ司会進行。
- チャーミングな男女のデュオ「GAIA」の耳心地良い調べ。
- バラエティーに富んだ才能あふれる、最終審査に残った11の新進気鋭たちのコレクション。
そのいずれもが、この夜のために特設されたステージ&キャットウォークで展開。そうして迎えた、栄えある1位の座を射止めたのは?
世界の主要都市で貴重な経験を重ね、現在はイタリアを拠点に活躍する日本人デザイナーSatoshi Kuwataによるブランド「SETCHU」!
言うまでもなく、ブランド名は「和洋折衷」に由来するとのこと。
そこで早速、Kuwataさんに祝メールを添え、感動のコメントいただく機会を得た。
「かなり豪華な顔ぶれの審査員に選んでいただいたことが、とても光栄です。普段あまりお話をできる方々では無いので、そうした方々の反応を拝見することができ、大変感動しました。またイタリアではかなり有名な賞ですので、普段から応援をして頂いている生地屋さんをはじめ、工場の方々はもちろん、この賞の受賞を聞いた時は僕以上に喜んで頂けました。また日本人としては初めての受賞だそうで、それもまたビックリしました」
参考までに、審査員のコメントで心に残ったことを尋ねたところ…
「SETCHUの洋服はかなり試験的な作りをしており、即座に目で確かめることができます。が、『作り方も含めて、変えないように!』と。また安く売れるように作ろうとすると、どうしても他社と似たような商品になってしまいますので、『納得のいく物を作っていく姿勢を保ちなさい』とのアドバイスを頂きました」
ちなみに豪華な顔ぶれの審査員の中には、フェンディ女史はもとより、アレッサンドロ・ミケーレ(グッチのクリエイティブディレクター)や、当プロジェクトを経て活躍するモデル出身のデザイナーで国連親善大使を務めるステラ・ジーンも。
というわけで、今回の「CINEMATIC JOURNEY」のテーマにも掲げた「Altaroma発『和×洋』」は、SHOWCASE&キャットウォークで目にしたイタリア人女性デザイナーによるオリエンタルなテイストが香る「MUUSA」独自のスタイル「KIMONO」のバリエーションも印象的だったことを付け加えたい。
かなり駆け足で巡った今回の「CINEMATIC JOURNEY」2022夏旅編「+(プラス)」@ローマとも称したい「Altaroma発『和×洋』」。冒頭でも記した通り、今秋には「ロマーノ」な名匠、ナンニ・モレッティやダニエーレ・ルケッティによる新作の日本公開が待ち受ける。
そして今回のバラエティーに富んだショーの中でも、とりわけシネマチックな演出の余韻に浸るのが、同じく「ロマーノ」なデザイナーのブランド「Maison Luigi Borbone」の「Modern Times」かも!?
Ciao Ciao!
(全画像提供:© courtesy of Altaroma)
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中