映画が教えてくれること(宇佐美浩子)

2021/02/02 06:00 更新


かつて体験したことの無いような時間の流れの中で、それぞれの現状に向き合い、私同様、各自各様に未来を模索するのではないかなぁなどと思うこの頃。

ネットや読書から学び得るさまざまな気づきや事柄に加え、映画から学ぶ「何か」も決して少なくはないはずと思ったりもして。

そこで今回の「CINEMATIC JOURNEY」は、「映画が教えてくれること」をテーマに、鑑賞前後の+α的話題をシェアしたく…

≫≫宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから


☑映像美の着想源は、中国山水画の傑作絵巻「富春山居図」。

☑2022年開催予定のアジア競技大会の地、急激に変化を遂げる監督の故郷、杭州市、富陽が舞台。

☑出演者のほとんどが監督の親族、かつまた実像とほぼ近い役柄で好演。

☑中国の節句や伝統行事を垣間見れる。

さて、その監督の名は「グー・シャオガン」。

今、注目すべき中国新世代監督にして、故郷への熱き思いが込められた150分という長編デビュー作。

それが本作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』


本作資料に

「監督は大学で服飾デザインとマーケティングを学ぶ」

という文字を発見。ところが、さらに文字を追っていくと…

「中国の大学受験の仕組みで、ある点数に達しない場合、希望のコースではなく、振り替えの進学コースがある」

というわけで、実は監督の希望は「アニメと漫画」だったと知り、思わず笑みがこぼれた。

ちなみに映画好きになったきっかけは、岩井俊二監督の『Love Letter』や『リリイ・シュシュのすべて』に感動し、映画を見るようになり、次第に好きになったそう。

ここで参考までに、2021年の中国のお正月「春節」は2月12日(土曜日)。よって中国で最も長い連休と称される春節休暇は2月11日(大晦日)の土曜から2月17日木曜までの7連休とのこと。

そして本作の日本公開も下記の通り、ちょうどそのタイミング!


『春江水暖~しゅんこうすいだん』

2020年2月11日(木・祝)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

©2019 Factory Gate Films All Rights Reserved



「映画が教えてくれること」をテーマに巡る「CINEMATIC JOURNEY」。後半は前述の監督が映画好きになったきっかけの岩井監督のホームグラウンド、、日本の映画の話題。


☑同じ駅で終電を逃した

☑同じライブも見逃した

☑愛用の靴も同じ「コンバースのジャックパーセル」

☑本棚に並ぶ書籍もほぼ同じ(宮沢賢治、三浦しをん、「今日の猫村さん」、手塚治虫など)

☑映画の半券をしおり代わりに使用するのも同じ

…and more

偶然出会い、次々と重なる共通点に互いの距離を縮めていく大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。

21歳で出会い、最高に忘れられない5年間を紡ぐラブストーリー『花束みたいな恋をした』


ミレニアル世代のカルチャーが散りばめられた、現在公開中の話題作。

その構成要素を本作資料に基づき、紐解いてみた。

たとえば劇中に登場する次の曲の歌詞にも耳を傾けてみてほしい。2人のその時々の心情が香る。

☑「クロノスタシス」byきのこ帝国

☑「アウトサイダー」by Awessome City Club

☑「NIGHT TOWN」byフレンズ

そしてまた麦が着用するTシャツも、よく見ると「スチャダラパー」や「ZAZEN BOYS」といったミュージシャンの昔のツアーTなどに、さりげないファッションへのこだわりが表現されている。 

特に感動したのは、2人が暮らす空間のインテリアについて。

手作り感と、フランス映画の色調をイメージし、そこには必ず本作タイトルにも通じる「花」(生花、造花、プリントなど)をどこかに入れることを意識したというのだから。


「多様な国籍、時代、文化を学び得るアートの時間=映画」

2021年も分かち合えたら!


『花束みたいな恋をした』

1月29日(金)より全国公開中

配給:東京テアトル、リトルモア

Ⓒ2021『花束みたいな恋をした』製作委員会


≫≫宇佐美浩子の過去のレポートはこちらから

うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



この記事に関連する記事