かつて体験したことの無いような時間の流れの中で、それぞれの現状に向き合い、私同様、各自各様に未来を模索するのではないかなぁなどと思うこの頃。
ネットや読書から学び得るさまざまな気づきや事柄に加え、映画から学ぶ「何か」も決して少なくはないはずと思ったりもして。
そこで今回の「CINEMATIC JOURNEY」は、「映画が教えてくれること」をテーマに、鑑賞前後の+α的話題をシェアしたく…
☑映像美の着想源は、中国山水画の傑作絵巻「富春山居図」。
☑2022年開催予定のアジア競技大会の地、急激に変化を遂げる監督の故郷、杭州市、富陽が舞台。
☑出演者のほとんどが監督の親族、かつまた実像とほぼ近い役柄で好演。
☑中国の節句や伝統行事を垣間見れる。
さて、その監督の名は「グー・シャオガン」。
今、注目すべき中国新世代監督にして、故郷への熱き思いが込められた150分という長編デビュー作。
それが本作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』。
本作資料に
「監督は大学で服飾デザインとマーケティングを学ぶ」
という文字を発見。ところが、さらに文字を追っていくと…
「中国の大学受験の仕組みで、ある点数に達しない場合、希望のコースではなく、振り替えの進学コースがある」
というわけで、実は監督の希望は「アニメと漫画」だったと知り、思わず笑みがこぼれた。
ちなみに映画好きになったきっかけは、岩井俊二監督の『Love Letter』や『リリイ・シュシュのすべて』に感動し、映画を見るようになり、次第に好きになったそう。
ここで参考までに、2021年の中国のお正月「春節」は2月12日(土曜日)。よって中国で最も長い連休と称される春節休暇は2月11日(大晦日)の土曜から2月17日木曜までの7連休とのこと。
そして本作の日本公開も下記の通り、ちょうどそのタイミング!
2020年2月11日(木・祝)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
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「映画が教えてくれること」をテーマに巡る「CINEMATIC JOURNEY」。後半は前述の監督が映画好きになったきっかけの岩井監督のホームグラウンド、、日本の映画の話題。
☑同じ駅で終電を逃した
☑同じライブも見逃した
☑愛用の靴も同じ「コンバースのジャックパーセル」
☑本棚に並ぶ書籍もほぼ同じ(宮沢賢治、三浦しをん、「今日の猫村さん」、手塚治虫など)
☑映画の半券をしおり代わりに使用するのも同じ
…and more
偶然出会い、次々と重なる共通点に互いの距離を縮めていく大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。
21歳で出会い、最高に忘れられない5年間を紡ぐラブストーリー『花束みたいな恋をした』。
ミレニアル世代のカルチャーが散りばめられた、現在公開中の話題作。
その構成要素を本作資料に基づき、紐解いてみた。
たとえば劇中に登場する次の曲の歌詞にも耳を傾けてみてほしい。2人のその時々の心情が香る。
☑「クロノスタシス」byきのこ帝国
☑「アウトサイダー」by Awessome City Club
☑「NIGHT TOWN」byフレンズ
そしてまた麦が着用するTシャツも、よく見ると「スチャダラパー」や「ZAZEN BOYS」といったミュージシャンの昔のツアーTなどに、さりげないファッションへのこだわりが表現されている。
特に感動したのは、2人が暮らす空間のインテリアについて。
手作り感と、フランス映画の色調をイメージし、そこには必ず本作タイトルにも通じる「花」(生花、造花、プリントなど)をどこかに入れることを意識したというのだから。
「多様な国籍、時代、文化を学び得るアートの時間=映画」
2021年も分かち合えたら!
1月29日(金)より全国公開中
配給:東京テアトル、リトルモア
Ⓒ2021『花束みたいな恋をした』製作委員会
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中