「エルメス」の非営利団体、エルメス財団は、「アーティスト・レジデンシー」10周年を記念する展覧会「転移のすがた」を、東京、ソウル、パリ郊外パンタンで同時開催している。
アーティスト・レジデンシーは、エルメスのアトリエに招待したアーティストと職人が協働制作するプログラム。この10年間でアーティスト34人が21カ所のアトリエに滞在し活動した。
同展では皮革、シルク、クリスタル、シルバーを素材とし、それに向けられた限りない発想、または実験的な試みによる「転移」の成果を、3都市それぞれ異なる視点から回顧する。
パンタンでは31作品を展示。セリア・ゴンドルはリヨンのアトリエで、様々なグラフィックのモチーフに視覚化した天体物理学を、40メートルのシルクの織物で描いた。クラリサ・ボーマンはシルバーのスプーンを17メートルの弦に伸ばし、チェリストがそれを弓で音に。素材を聴覚の作品へと転移させた。こうした奇想天外なアイデアを、伝統と革新で錬金術のように実現させた職人の技術には圧倒される。
東京展は銀座メゾンエルメスのフォーラムで4月3日まで。
(パリ=松井孝予通信員)