男女雇用機会均等法30年㊥点から面に

2016/05/01 06:02 更新


女性も男性も働きやすく

 

 女性の採用や定着に関して、繊維・ファッション業界では素材をはじめとするメーカー系が苦戦する一方、消費者と直接に向き合う小売業が女性の〝母集団〟作りで先んじた面がある。

 

 上場企業で「男女雇用機会均等法」施行前から、「採用枠があったのは、高島屋と西武百貨店(当時)」(高島屋の肥塚見春代表取締役専務)といわれるほど珍しかった。両百貨店は現在も、女性執行役員・取締役を複数輩出、女性の活躍が目立つ企業だ。組織の主流と異なる母集団を形成するには時間と労力が要る。取り組みの歴史が長いほど、跳躍力も高まる。

 

ガラス中_女性の年齢階級別労働力率の推移 

 

個を生かす

 

「女性の活用よりも、全体の仕組みを変えていくことが課題」。そごう・西武の田口邦子執行役員は、そう話す。女性管理職の割合は国の平均値を大幅に上回る。むしろ、男性の育児時短や介護休暇を含め、より多様で働きやすい環境整備に力を入れている。「仕事は人生の半分を使う場。成長があり楽しいもの。その面白さは、自分で考える力から」。それを引き出すには、「個人の能力・意欲を大事にしないと。そのために会社は、どんなサポートができるか」が重要になる。

 

 一人ひとりの働きやすさを考えた時、女性の立場に配慮し、整えてきた制度や活動が役に立つ。かつて、「滅私奉公」が日本の企業風土を表していた時期があった。しかし、その土俵を降りざるを得ない人々もいた。それが典型的に現れたのが、「出産適齢期の女性たちではなかったか」(田口執行役員)。身近な典型例の総体がM字カーブであり、M字の大きな凹みが「もったいない」ことに30年をかけて社会が気づいた。その結果が、諸制度に結実、働く女性たちを増やす土台になった。

 

お客は女性

 

 インターネットで物が流通する時代。目的が明確な消費者はネットで商品を買う。百貨店の売り場では、お客の視線や態度から、お客が求めている「何か」を探し当てるような能力が必要になってきた。お客の大半が女性。その心に寄り添う際、女性の方が有利な傾向にある。そのため、百貨店の社長が「男性は女性の3倍努力しないと」などと発言することも増えた。

 

 「女性は、男性の3倍がんばらないといけない」。均等法が施行された頃から、よく聞かれた文言だ。30年を経て、男女が逆転して使われ始めた。

 

 ルミネは社員の8割を女性が占める。施設は女性客が主体でショップスタッフも女性が多い。女性が働きやすい環境作りは重要で、制度を含めて対応を強化している。しかし「現実に女性が働きやすくなっているかどうかは、道半ば」と新井良亮社長は話す。例えば、産休を取ったり、子育てのために時短勤務する際、「女性社員が引け目を感じる風土がまだある」という。様々な制度に改善の余地があるとした上で、「女性がプレッシャーに感じない雰囲気作り、出勤して、もっと楽しいと思える環境作りをしていかねば。女性が働きやすいということは男性にも通じる」。

 

(繊研新聞 2015/12/18 日付 19378 号 1 面)



この記事に関連する記事