【ゲームチェンジャーU35】④アップルズアンドオレンジズ社長 小田駿一さん

2017/05/06 06:50 更新


アップルズアンドオレンジズ 小田駿一社長

大手企業がやらないことを


 「職人やデザイナーの思いが込められた物が今よりもっと受け入れられるようになり、ファッションを〝楽しむ〟文化を広げたい」とは、アップルズアンドオレンジズ社長の小田駿一さん(26歳)。昨年末に同社を設立、2月にオリジナルテキスタイルブランド「アップルズアンドオレンジズ」をスタートした。作り手のぬくもりや情熱が感じられるハンドメイド製品を送り出し、ファッションの多様性を取り戻す。


好きな領域に挑戦


 元々ファッションが好きだった小田さんは、大学時代にファッションマガジンを創刊し、約2年間編集長を務めた。その後、英国へ留学。語学学校に通いながら、ファッションフォトグラファーとして米国、英国、日本の雑誌編集に関わった。帰国・卒業後はアートの道も考えたが、「一度は企業の中でビジネスを作る経験を」と大手メーカーに就職。新規事業開発や投資に携わり、多くの起業家と出会った。「当時の経験がなければ今はなかった」と振り返る。


 独立のきっかけは、自身が父親になるとわかってから。「自分が本当にやりたいことは何か」と改めて考え直した。大手企業を辞める不安に加え、実家が東京都墨田区の縫製工房のため、ファッション業界の厳しさも知っていた。しかし、「もうかる、もうからないよりも、自分の好きな領域に挑戦している姿を子供に見せよう。真剣に働けば家族が何とかご飯を食べていけるくらいになれるはず」と独立を決意した。


大量生産にない美


 同社が目指すのは、「職人やデザイナーの手仕事や技術が大切にされるファッション文化の醸成」だ。「ハンドメイドは非合理で非効率かもしれないが、大量生産にはない美しさがある」という。そうした作り手の思いのある商品を提案し、「手にした人の心を豊かにしたい」と意気込む。

 商品第1弾はテキスタイルデザイナーが手描きした自然モチーフのオリジナルプリント柄を、綿100%で柔らかく肌触りの良い帆布にあしらったバッグ3型だ。生産・販売に向けては、2月16日からクラウドファンディングサイト「マクアケ」で出資を募った。目標金額の100万円は早々に超え、すでに約170万円を集めている。

 メディアに掲載された効果もあり、3月は期間限定売り場や他社ECでの販売が決まるなど順調なスタートを切った。また、4月下旬には三越伊勢丹の自社雑貨ブランド「ナンバートゥエンティーワン」と協業商品も発売する予定だ。直近では3月21日まで、東急プラザ銀座地下1階のハンカチ専門店「スイミー」で展示販売している。

 今後は、普段使いの小物雑貨から、壁紙やソファカバーなどリビング雑貨まで商品の幅を広げていく。「将来的には国内外で10店近く店を出したい」思いもあるが、「数字や規模は過度に追求せず、家族と仲間がしっかり食べられて、ファンに価値を認めてもらえる商売を地道に続ける」ことに変わりはない。「当社のやるべきことは大手がやらないこと。使ってくれる人が、子々孫々と語り継いでくれる事業運営を心掛けたい」という。

空をイメージしたオリジナル柄のショルダーバッグ(1万5800円)


90年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。大手メーカーの経営企画部門でコーポレートベンチャーキャピタル立ち上げ時から参画し、投資に携わる。独立後、16年12月にアップルズアンドオレンジズを設立した。



この記事に関連する記事