外国人旅行客激減のフランス 苦しむ小売業、次を模索

2020/08/25 06:29 更新


 新型コロナウイルスの影響で外国人旅行客が激減した世界一の観光大国フランス。感染の終息が見えないまま、ラグジュアリーブランドと百貨店は、インバウンドに代わる次の戦略を模索している。

(パリ=松井孝予通信員)

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 パリ市を囲むイル・ド・フランス圏の19年の外国人旅行客数は5030万人と過去最高となり、消費額は220億 ユーロ に上った。一転、この夏だけでも、シャンゼリゼ大通りの商業施設の売上高は50~70%減少した。

 ラグジュアリー店が密集するモンテーニュ大通りはさらに人気がない。

 この地域の売上高の半分は外国人旅行者が弾く。同大通りに「グッチ」「バレンシアガ」「サンローラン」の店舗を構えるケリンググループのフランソワアンリ・ピノー会長兼CEO(最高経営責任者)は仏メディアに対し、「外国人旅行客の回復には少なくても1年かかる」と予測した。同グループは販売員を再教育し、地元消費者に電話して店舗へ招待するなど、ローカル客の開拓を推進している。

 LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは、小売り部門の再編に着手した。傘下百貨店のサマリテーヌの全館改装オープンを1年延期。ツーリストゾーンにある化粧品チェーン店「セフォラ」4店を閉店する。

 ギャラリー・ラファイエット本店の1日当たりの来店者数は、コロナ前は8万人、現在はその約40%に落ち込んでいる。社員200人を一時帰休させ、新規採用を凍結した。17年に本店近くに開設した観光客用の別館は閉鎖。将来の不透明感から3億 ユーロ の政府信用保証融資を申請している。

 中国や中東の富裕層の顧客を抱える百貨店プランタンは、国際戦略として投資してきた本店のパーソナルショッピングの新サービスで、デジタルツールを利用したディスタンス(遠隔)ショッピングのサービスを開始した。予定していたイベントなどに関しては大幅な見直しが進められている。

 パリ左岸の百貨店ル・ボン・マルシェは、外国人旅行客が売上高の半分以上を占める他店と異なり、地元と欧州の富裕層を顧客に持つ。秋からはさらに独占ブランドを増やし、顧客サービスとしてショッピングや文化的なプログラムを充実させる。

シャンゼリゼ大通りの「ルイ・ヴィトン」。例年夏と比べ行列は短い

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