「永遠」という言葉に、なぜか魅かれる。
だからついつい「永遠の…」という枕詞のついた、そう簡単には手にすることのできないステキなものに、心が揺らいでしまう。
ファッションだって、移ろう時代の空気をまといつつも、どこかに不変性がプラスされると、さりげないエレガンスの香りがすると思うわけで。
「そんなイメージが重なる女性像って誰だろう?」と、思いめぐらす中、世代を超えて語り継がれる一人がこの女性。
「ジャッキー」こと、今は亡き第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディ夫人(1961~63年)として、その品格あるファッションセンスが世の注目を集めたジャクリーン・ケネディだ。
噂によれば、現ファーストレディのファッションのお手本的存在なのだとか。
というわけで今回のCINEMATIC JOURNEYは、「永遠のファッションって?」をテーマに、いま注目したいシネマをシェアしつつ、それぞれが思い描く「ファッション」と「永遠性」についての春時間をご一緒したく!
まずは3月31日より全国公開の映画『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』の象徴的な、そしていつまでも語り継がれるこの1シーンからスタートすることにした。
ちなみに、ここに掲載されている画像のいずれかを、「最近、街中で見かけたことがある!」なんていう方がおいでかも。
実は4月2日まで、「バーニーズ ニューヨーク」銀座本店、横浜店、福岡店にて、本作でジャッキー役を演じたナタリー・ポートマン着用の衣装を展示中なのです。
恥ずかしながら、私もこの作品に出会うまでは、ジャッキーマニアでもなかったため、彼女に対する知識はかなり薄っぺらなものだったのですが、よくよくリサーチしていくと、次のようなことが判明!
☑フランスの血を引く
☑フランス留学経験あり
☑シャネルやジバンシイなどヨーロッパのブランドを愛用…etc.
「なるほど、そういうわけか…」と一人納得した次第。
ちなみに本作資料によると、ジャッキー自身のファッションは「ほとんどがオートクチュール」という記載を目にした。
それゆえ本作も同様に、衣装デザイン担当のマデリーン・フォンテーヌ(『アメリ』(01)や『イヴ・サンローラン』(14)などの衣装も担当)によるお手製、つまりオートクチュールというわけだ。そこでまた一つ、新発見が!
当コラム最初の写真にもある、大統領暗殺時に着用し、有名になった
"ストロベリーピンクのシャネルスタイルのスーツ"
つまり、この表現が示す通り、アメリカのファーストレディとして公式行事に出席する際は、自国のブランド着用が必須ということもあり、なんとヨーロッパから生地を取り寄せ、ニューヨークで仕立てたという、まさに彼女らしいこだわりの逸品なのです。
そしてまた、ジャッキースタイルのお約束アイテムと称してもいい、コスチュームジュエリー「3連のパールのネックレス」。思えばこのコーディネートも、「シャネルスタイル」と言っても、過言ではないはず。つまりそれほどまでに、彼女にとって「シャネル」というメゾンの存在は、大きなものだったのではないかなぁと。
ともあれ、ファッション同様に興味深い本作。そのストーリーから知る彼女の虚像と実像。そして近年、日本では「いい夫婦の日」として知られる11月22日がJFKの命日というのも、心なしか偶然というよりは、必然のような気がしてしまう…
3月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
配給 キノフィルムズ
2016 Jackie Productions Limited
さて、つづいてのCINEMATIC JOURNEY「永遠のファッションって?」の向かう先は、昨今話題作が続く神木隆之介主演の2部作『3月のライオン』 (前編が3月18日より公開中)
人気コミック「3月のライオン」の実写映画化とあり、おそらくストーリーをご存じの方もおいでかとは思うのですが、少しばかりご紹介を――
9歳にして家族を交通事故で失い、独りぼっちになってしまった主人公、桐山零(神木隆之介)。棋士である父の友人に引き取られ、内弟子として将棋の才能を開花。中学生でプロの棋士としてデビュー。
が、現実は隅田川を臨む東京・下町での一人暮らし。孤独と向き合いながらも将棋に挑む日々…決してきらびやかなものではない。ところが、ひょんな出会いから、温かな「人の愛」を知る。こうして彼をとり囲む人々の輪の広がりと共に、苦悩しつつも成長していくヒューマンドラマだ。
というわけで、今回のテーマとなる「永遠」、そして「ファッション」。を語る前に、まず「将棋」という存在自体に永遠性が宿っている。なぜなら、将棋やチェスのルーツと言われる「チャトランガ」は、はか昔、古代インドで誕生した、まさに永遠なるボードゲームだから。
そしてプロの棋士としてゲームに挑む際に着用する服装もまた、伝統ある装いが好まれ、その凛々しい姿は“ COOL !!! ”
そこで早速、本作におけるファッションについてリサーチ。するとなかなか興味深い話を入手。
☑プロ棋士たちのスーツと着物、主人公と二階堂(染谷将太)の私服などはすべて、衣装デザイン担当者によるオーダーメイド。
☑着物は主に洋服生地で作り、宗谷名人(写真上、加瀬亮)には、光を吸い込むような質感に。
☑主人公愛用のダッフルコートは、紺、グレー、カーキの3色。心情の変化を追い、着替える。
☑主人公のメガネは職人に依頼し、対局時にはマットな質感の木、日常にはセルの2モデル。
などなど、いろいろこだわりのある衣装の中、やはり日本ならではの棋士の着物は外せない。とりわけ、伝統的衣装の中に現代のエスプリが香るオトコの着物はエレガントだ♥
また、1820年代に誕生したといわれるダッフルコートも、微妙に異なるデザインや色のバリエーションが、永遠の定番と言われる所以なのだろう。
最後に、思わず聖地巡礼したくなるほど、次々と登場する対局シーンのスポットのすばらしさに目を見張るのが本作の魅力。
トム・クルーズ主演の『ラストサムライ』にも登場した兵庫県にある数多の重要文化財を有する書寫山圓教寺や、1070段もの石段が印象的な山形県の立石寺。また都心とは思えない見事な日本庭園にたたずむ有形文化財でも有名な「ホテル椿山荘東京」は、実際に名人戦の第1局が開催される場所という。
そのほかストーリーに華を添える永遠なる魅力の数々を、ぜひスクリーンでチェックの程!
【前編】3月18日(土)より、 【後編】4月22日(土)2部作連続・全国ロードショー
配給:東宝=アスミック・エース
c2017映画「3月のライオン」製作委員会
CINEMATIC JOURNEY「永遠のファッションって?」。ゴールとなるのはこちら。イザベル・ユペール主演、ミア・ハンセン=ラブ監督の『未来よ こんにちは』
“想いもよらない現実が目の前に起こり得るのが人生よ”
なんて軽く吹き飛ばしてしまいそうなパリの高校で哲学を教えるナタリー。50代後半。突然の夫の離婚宣言に、介護していた母の死、おまけに仕事も…といった、嵐のような日々にひるむことなく前進する彼女。その潔い姿に、追随したくなる女性たち、そして男性だって少なくないかも?
そして「お一人さま」を満喫すべく訪れる、教え子が仲間と暮らすローヌ・アルプ地方の大自然あふれる風景の中に溶け込む時間。
どんな時もファッションへの配慮を忘れないヒロインを、時に役柄と一体化してしまうほどの女優魂で演じ切るイザベル・ユペール。
本人自ら語る本作とファッションの関係。それは…
「コスチュームには、細かいところまで気を使って考えました」。その結果、「繊細かつ明確なデザインのものを揃えました」と結んでいる(本作プレス資料より)。色鮮やかなフラワープリントのワンピースでヴァカンスを満喫するオフタイム、また教師らしく、スリムなボディラインにフィットしたパンツスタイルでのオンタイムなど、「エイジングもなんのその」ないでたちが美しい★
またスクリーンに時折顔を見せる、フレンチヴァカンスの定番「エスパドリーユ」。前述のダッフルコート同様、さまざまなブランドから、それぞれ異なる素材や色のバリエーションで登場し、デザインの永遠性を無言で物語っているかのようだ。
3月25日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
c2016 CG Cinema ・ Arte France Cinema ・ DetailFilm ・ Rhone-Alpes Cinema
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中