「なぜMD・販売・ECの連動が必要なのか」、そして「その連動によってどのような効果が生まれるのか」について、販売・MD・ECそれぞれの分野で活躍するスペシャリストが実例を交えながらざっくばらんにお話ししていきます。
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売場のことわかってますか?
勘違いの多いEC業界の現実

ECも販売も「商品を売ること」が使命じゃないですか。ちょっと前まで、いや、今でもそう思っている販売員もいるかもしれないけど、「ECにお客さまが奪われる」という感覚があるんですよね。
SNS投稿やECサイトに販売員のスタイリングが載るようになって、その感覚は変わってきていると思うんですけど、EC側の人はどう感じてます?

そうですね。でも、まだまだ連動できているかって言われると、そうでもないですよ(笑)。ECの現場を見ていると「ウェブ広告を活用すれば売り上げ伸ばせます!」とか謳っている人がたくさんいて、大いなる勘違いをしているなって思ってみてます。
まだまだ、店頭がどういう仕事をしているのか理解している人が少ないんじゃないかな。

そうなんですかー!

仰っていた販売員のスタイリング投稿も「アップされれば売り上げもあがる」って、EC界隈では思われてますけど、それってタイミング次第なんですよ。
例えば、新商品が出るタイミングに合わせて販売員たちがそれぞれスタイリング投稿して、このアイテムはいろいろなスタイリングができますよとバリエーションで見せられるようにしないと意味がない。

確かに!それを見て、店頭に足を運ぶお客さまもいますよね。

でも、それができてないところがまだ多いんですよ(笑)。
販促にしても同様で、サイトと店頭の販促を上手く連動させることが店頭へお客さまを誘導することになって、ひいてはブランド認知にもつながるのに、そこまで理解が及んでいない感じです。
去年、EC界隈で「ロイヤリティープログラム」っていう、会員になった方を手厚くもてなそうというのが流行したんですよ。詳しく内容を聞くと、すでに店頭では大昔からおこなわれていた顧客施策で、「それを今ごろ?どういうこと?」って思いましたよね。

そうなんですか…。今の話を聞いて「売場のことはわからないから、販売の仕事は販売員で考えてよ」って、突き放されている理由がなんとなく伝わってきました。
そうなると、これから販売員の役目は接客やSNS投稿以外にも増えそうですね。

2人の話を聞いていて感じるのは、「なんかわからないけどテクノロジーが問題を解決してくれる」と過信している経営者とかが多いことが最大の問題じゃないかな。
本来、テクノロジーが解決できることは「その仕事の余計な部分を省くこと」で、本質的な課題は全く解決しないってことを覚えておいたほうがいいね。

そうなんですよ。ウェブ広告で最近流行っている“最適化”も、何をもって最適化しているんだかって感じなんですよ。最適化しようが、何をしようが、売れるものは売れるし、売れないものは売れないのが当たり前なんですけどね。次回は売り場と本部の距離についてお喋りします。
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■登場人物

MDコース講師:佐藤正臣
「数学は嫌いでも、算数はできるはず」でお馴染みのマサ佐藤。大手セレクトショップでMDを務め、現在はリテールMDアドバイザーとしてアパレルからライフスタイルブランド・スーパーマーケットなど、幅広い分野のマーチャンダイジング改善に従事。

販売コース講師:平山枝美
接客研修から顧客戦略の立案・推進、それに伴う接客方法・陳列・POP作成・マネジメントまで指導する販売コンサルタント。著書『売れる販売員が絶対言わない接客の言葉』は現在13刷達成!繊研plusで「間違いだらけの売場支援」を連載。

ECコース講師:深地雅也
ファッション・アパレルに特化したEC運用の支援に従事。得意とするのはGA4・BigQueryなどを活用したWEB解析の分野。年間計画立案からPL管理、CRM分析までECの販売計画に関わる領域を幅広くサポート。これまで80ブランド以上の運用に携わる。
■Fashion Re:ducation
ファッション業界の教育事業「Fashion Re:ducation」。販売・MD・ECそれぞれの分野で活躍するスペシャリストが講師を担当。キャリアアップを目指す方、異なる専門領域を学びたい方、今のやり方に迷いを感じている方に向けて、現場ですぐに活かせる実践的な技術と知識を学べる講座を提供しています。
