販売スタッフの業務軽減へ ロボットの本格活用も間近に
EC化率の上昇やライブコマースの台頭など、売り方に変化が見られるが、ファッションビジネスでの販売は今も実店舗が中心だ。人と人のやり取りがもたらす購入促進の力は大きい。ただ、販売現場には人手不足という大きな課題が横たわる。人口減少社会に突入した日本は、この先も労働力不足に悩むことになるだろう。最新テクノロジーによる効率化を進める必要があり、販売スタッフの業務軽減、働き方改革の推進に向き合わなければ未来は作れない。
接客に集中できない
「販売スタッフが本来すべき仕事に集中できていない」。この嘆きは現場、経営者の双方からよく聞かれる。一説には、ファッション分野の販売職の平均的店頭業務の約70%は清掃、品出し、商品管理、レジ業務など。なかなか接客に集中できないのが現状だ。消費が二極化し、「接客サービス体験について、リアル店舗しかできない役割がより明確化するのではないか」(アトレ)、「店舗はリアルならではの感動体験を提供する場であることを求められる」(イトキン)とすれば、スタッフが最大限、接客に力を発揮できる環境を整えなければならない。
「最新のテクノロジーを導入するのは、テナントの皆さんに接客に集中してもらいたいから」。パルコは昨年11月に開業した東京・上野御徒町の「パルコヤ」で、来店者数や来店者属性(年齢・性別)を解析するサービスを各ショップに導入した。これまでも顧客の属性を把握するシステムは存在したが、「パルコだけでなく、個々のショップが属性を把握できるようにした。テナントがシフトを組む際に参考になるほか、商品提案にも活用できる」(林直孝執行役グループICT戦略室担当)と狙いを説明する。
パルコは、20年に向けた長期ビジョン達成のための事業戦略の一つとして「独自の先行的ICT(情報通信技術)活用」を推進中。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)のトライアルやロボットの活用に乗り出している。ロボットでは自走式の「シリウスボット」の実証実験を行った。シリウスボットは、営業時間中は来館者への案内業務をし、閉店後はICタグを読み込んで、販売スタッフの棚卸し業務をサポートする。「ICタグの読み取りには、まだまだ誤差もあったが、課題を埋めていきたい。棚卸し作業の自動化は販売スタッフにとって有益だ」とみている。
就業者は増加中だが
総務省統計局の「労働力調査(基本集計)」によると、17年11月分(速報)の就業者数は前年同月比で75万人増加し、6552万人。59カ月連続の増加だが、ファッション販売の現場は慢性的な人手不足が続く。他産業との人材獲得競争のなか、テクノロジーの活用は欠かせない。